ご相談・お問い合わせ
民泊規制

2026.09.05

京都市の民泊規制がさらに強化へ|簡易宿所の常駐義務案と既存の民泊物件への影響【2026年夏最新】

京都市で、民泊・簡易宿所に対する規制強化の議論が大きく動き始めています。

以前、ShuJu不動産では「京都市の民泊・簡易宿所規制」について、京都の宿泊施設を取り巻く環境が転換期を迎えていることを紹介しました。

今回はその続編です。

2026年8月31日に開催された「第2回京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」では、京都市から具体的な規制強化策の素案が示されました。

なかでも不動産オーナーや宿泊事業者への影響が大きいと考えられるのが、

「全ての簡易宿所について、施設内または隣接建物への常駐義務を課す」

という案です。

さらに、この規制については新規施設だけではなく、既存施設への適用も検討されています。

京都で民泊物件や簡易宿所物件を所有している方、これから購入を検討している方にとって、かなり重要な議論になってきました。

※この記事は2026年9月時点で京都市が公表している「素案」をもとにしています。現時点で条例改正の内容が確定したわけではありません。

京都市の民泊規制は「検討」から具体案の段階へ

今回の第2回検討会議では、京都市が今後の民泊規制について、大きく3つの方向性を示しています。

一つ目が、旅館業法上の簡易宿所と住宅宿泊事業法上の民泊を、できるだけ一体的に規制すること。

二つ目が、施設内への常駐を最大限求め、「誰かが常に現場にいて対応できる状態」を確保すること。

三つ目が、住宅地や道路条件、建物形態などに応じて、より細かな立地規制を検討することです。

これまで京都市の民泊規制では、「施設からおおむね10分以内で駆け付けられること」が一つの重要な基準になっていました。

しかし今回の素案では、その考え方を一段階進め、「近くにいる」から「施設内または隣接建物にいる」へ変更する可能性が示されています。

全ての簡易宿所に「施設内・隣接建物への常駐義務」案

現在、京都市では小規模宿泊施設や京町家を利用した施設について、宿泊者がいる間、施設からおおむね10分以内、距離にしておおむね800m以内に到着できる場所への駐在を認めています。

今回示された新たな規制案では、

全ての簡易宿所について、施設内または隣接建物への常駐義務を課す

ことが検討されています。

住宅宿泊事業、いわゆる民泊新法による届出住宅についても同様です。

ここは非常に重要です。

例えば、これまで複数の民泊・簡易宿所を一つの管理拠点から運営し、「問題が発生した場合は10分以内にスタッフが駆け付ける」という形を取っていた事業者の場合、その運営方法自体を見直す必要が出てくる可能性があります。

なぜ京都市は「常駐」を求めようとしているのか

背景には、京都市に寄せられてきた民泊関連の苦情があります。

京都市の分析によれば、簡易宿所のうち民泊相当施設では、不在型施設に寄せられた苦情に加え、内部駐在型であっても従業員の不在や対応不足が疑われる事例が確認されています。

京都市はこれらを合わせ、簡易宿所における苦情の85%が施設内に従業員が駐在していないことに起因していると分析しています。

住宅宿泊事業についても同様の分析を行い、その割合を88%としています。

一方で、ここは京都市側の分析方法に基づく数字であることにも注意が必要でしょう。

例えば「騒音」そのものと「従業員が施設内にいないこと」は必ずしも同じ問題ではありません。

今後、本当に施設内常駐という方法が最も効果的なのか、規制による負担とのバランスも含めて議論されることになります。

既存の簡易宿所も規制対象になる可能性

今回の素案で、特に既存オーナーが注目すべきなのがここです。

京都市は常駐義務について、

「既存施設に対しても、猶予期間を与えたうえで一律に規制を行うことも検討」

としています。

つまり、

「すでに簡易宿所許可を持っているから、現在の運営方法を今後も続けられる」

とは限らなくなってきました。

もちろん、まだ決定ではありません。

猶予期間がどの程度になるのか、どのような施設が対象になるのか、「隣接建物」をどこまで認めるのかなど、具体的な制度設計もこれからです。

それでも、既存物件を含めて規制する可能性を京都市自身が明記した意味は小さくありません。

京都の「民泊物件」の価値も変わる可能性

不動産の観点から見ると、今回の規制は単なる運営ルールの変更にとどまりません。

今後は、

「民泊や簡易宿所として許可を取れる物件」

と、

「新しい規制のもとでも事業を継続しやすい物件」

が別物になる可能性があります。

例えば一棟の小さな戸建てや京町家について、宿泊施設だけのために常駐スタッフを配置するとなれば、人件費は大きくなります。

一方、

  • 同じ建物内に管理スペースを確保できる
  • 隣接建物を管理拠点として利用できる
  • 複数の宿泊施設と管理拠点を一体的に配置できる

といった物件であれば、新しい制度にも対応しやすくなる可能性があります。

つまり今後の京都では、民泊物件の評価に、

「どこに管理者を配置できるか」

という不動産上の条件が加わる可能性があります。

これは物件価格や売却のしやすさ、宿泊事業者による購入判断にも影響してくるでしょう。

住宅宿泊事業には「ゼロ日規制」も検討

住宅宿泊事業法による届出住宅については、さらに別の規制も検討されています。

京都市の素案では、

第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域および工業地域について、家主居住型・家主不在型を問わず営業日数をゼロとする

案が示されました。

いわゆる「ゼロ日規制」です。

ただし、この案については既存施設には適用しないとされています。

ここは常駐義務との違いを整理しておく必要があります。

常駐義務
→既存施設への適用も検討

住居専用地域等のゼロ日規制
→既存施設には適用しない案

となっています。

国も2026年7月、地域の実情などに応じて自治体が新たな住宅宿泊事業を禁止する「ゼロ日規制」を行うことが可能であるとの技術的助言を示しています。

路地奥の民泊にも新たな立地規制の可能性

京都の不動産では、細い路地や袋路に面した町家・戸建てが珍しくありません。

今回、この「路地」も規制の対象として議論されています。

京都市の調査では、届出住宅100施設当たりの年間苦情件数について、

  • 幅員1.5m未満:21.5件
  • 幅員1.5m以上4m未満:4.1件
  • 幅員4m以上:4.3件

となっています。

現在、簡易宿所では建築基準法上の避難規定などにより、幅員1.5m未満の袋路では実質的に立地が難しくなる場合があります。

一方、住宅宿泊事業は建築上「住宅」として扱われるため、同じ規制がかからないケースがあります。

そこで京都市は、

幅員1.5m未満の袋路等について、住宅宿泊事業も簡易宿所と同等に立地規制してはどうか

という方向で検討しています。

京都市中心部で古い町家や中古住宅を購入し、民泊へ転用する場合には、これまで以上に前面道路や路地の条件を確認する必要がありそうです。

長屋民泊には「遮音性能」の規制も検討

京都市内に多い長屋についても、新しい規制が検討されています。

京都市の資料では、100施設当たりの年間苦情発生件数について、簡易宿所の場合、

長屋18.0件
一戸建て10.9件

となっています。

住宅宿泊事業についても、

長屋9.1件
一戸建て6.8件

と、長屋の方が多くなっています。

京都市は、特に古い長屋では隣接住戸との界壁の遮音性能が十分でない場合があるとして、

長屋の一部を民泊として利用する場合に、界壁の遮音性能に関する規制を設ける

ことも検討しています。

これが制度化されれば、長屋については「営業できるか」という立地判断だけでなく、改修費まで含めた事業計画が必要になってきます。

京町家の民泊はどうなる?

今回の議論で非常に難しいのが、京町家です。

京都市によると、2026年3月末時点で京町家特例を活用した民泊は1,128件あります。

そのうち1,107件が、玄関帳場設置免除の特例を利用した簡易宿所です。

京都市自身も、京町家を宿泊施設として利用することについて、

空き家化や解体の防止につながり、京都ならではの宿泊・滞在体験を提供する活用方法の一つ

と評価しています。

一方、今回の常駐義務案では、

原則として京町家も規制対象とする

ことが検討されています。

つまり京都市には、

住民の生活環境を守るため民泊規制を強化したい

という政策と、

京町家を残すため活用を促進したい

という二つの政策があります。

今後、この二つをどう両立させるのかは大きな論点になるでしょう。

民泊は宿泊者の約4%、一方で苦情は74%

京都市が規制強化の根拠として示している数字の中でも、特に目を引くのが民泊の規模と苦情の割合です。

京都市は、簡易宿所のうち「民泊相当施設」と住宅宿泊事業を合わせた宿泊者を年間約130万人と推計しています。

これは京都市全体の宿泊者の**約4%**です。

客室数ベースでも民泊は全体の約7%とされています。

一方、平成30年度から令和7年度までの苦情を集計すると、簡易宿所の民泊相当施設と住宅宿泊事業を合わせて**苦情全体の74%**を占めています。

京都市としては、宿泊市場に占める規模と比較して、民泊に関する近隣トラブルが多いことを規制強化の重要な根拠としていることが分かります。

ただし、苦情件数と施設の違法性は同じものではありません。

適法に営業し、地域との関係を築きながら運営している施設まで一律にどの程度規制するのが適切なのかについては、今後も慎重な検討が必要でしょう。

「学校の近く」は新たな規制をしない方向

今回、すべてが規制強化となったわけではありません。

学校等の周囲については、新たな規制を行わない方向が示されています。

京都市の調査では、学校周辺の施設とそれ以外の施設で苦情発生率に大きな差は確認されず、「学校等に関連した民泊施設によるトラブルを見聞きした」と回答した近隣住民も5.8%でした。

そのため京都市は、学校周辺であることだけを理由とした新たな規制ではなく、常駐義務などの共通ルールで対応する方向を示しています。

これから京都で民泊物件を購入するなら何を見るべき?

今回の素案を踏まえると、これから京都で民泊・簡易宿所向けの物件を検討する際には、従来以上に慎重な確認が必要です。

これまで重要だった、

用途地域、接道条件、建築基準法、消防設備、旅館業許可の取得可能性

だけではなく、

施設内に管理スペースを設けられるか。

隣接建物を管理拠点として利用できるか。

袋路の幅員はどうなっているか。

長屋であれば隣接住戸との界壁はどうなっているか。

今後規制が変更された場合でも採算が取れるか。

といった点まで考えておく必要があります。

今後は「現在の法律で民泊ができる物件」だけを探すのではなく、

将来の京都市の規制にも対応しやすい物件かどうか

という視点が重要になってくるでしょう。

既存の民泊物件は「売る・住む・貸す」も含めて考える時期に

既存の民泊・簡易宿所オーナーにとっても、今回の議論は無視できません。

もし施設内・隣接建物への常駐義務が既存施設にも適用されれば、物件によっては運営コストが大幅に変わる可能性があります。

その場合、

宿泊施設として継続する。

長期賃貸へ切り替える。

自己居住用住宅として利用する。

別の事業用途へ変更する。

不動産として売却する。

といった選択肢を比較する必要が出てきます。

大切なのは、条例が決まってから慌てて判断するのではなく、自分の物件が新しい規制案のどこに該当する可能性があるのかを今のうちから確認しておくことでしょう。

今後の京都市の民泊規制はどう進む?

今回発表された内容は、まだ正式な条例ではありません。

京都市が示した想定スケジュールでは、

2026年11月2日
第3回「京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」

2026年11月中
規制案の策定、パブリックコメント

2027年1月
パブリックコメントを踏まえた規制案の策定

2027年2月
京都市会へ条例改正案を提案

という流れが想定されています。

したがって、2026年9月現在は、

規制強化の方向性はかなり具体的になったものの、最終的なルールはまだ決まっていない

という段階です。

特に今後注目したいのは、

「隣接建物」の具体的な定義、既存施設に与えられる猶予期間、京町家の特例、常駐する職員の要件などです。

まとめ|京都の民泊は「許可がある」だけでは判断できない時代へ

今回の規制案が示しているのは、京都市の民泊政策が新しい段階に入ったということです。

これまでは、

「この物件で簡易宿所許可が取れるか」

が一つの大きな判断基準でした。

しかし今後は、

「その許可を使って、将来も現実的に運営を続けられるか」

まで考えなければならなくなる可能性があります。

特に、

  • 既存簡易宿所への常駐義務
  • 住居専用地域などのゼロ日規制
  • 幅員1.5m未満の袋路
  • 長屋の遮音性能
  • 京町家の扱い

については、京都の不動産市場とも直接関係する重要な論点です。

ShuJu不動産では、宿泊施設としての利用だけを前提にするのではなく、売却・賃貸・住宅利用・宿泊施設としての継続など、不動産そのものの価値から活用方法を検討することが重要だと考えています。

京都で民泊物件・簡易宿所物件の購入や売却、今後の活用方法をご検討の方は、制度が確定する前から情報を整理しておくことをおすすめします。


関連記事・参考資料

前回の記事|京都市の民泊・簡易宿所規制について
前回までの規制の経緯はこちらから確認できます。
ShuJu不動産「京都市の民泊・簡易宿所規制」

京都市|第2回京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議
今回の記事で扱った「地域の実情を踏まえた民泊規制強化策(素案)」が掲載されている京都市公式ページです。京都市は2026年8月31日に同会議を開催し、規制強化策の素案について意見交換を行いました。
京都市公式ページを確認する

観光庁|住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について
2026年7月15日に発出された、ゼロ日規制やICT管理に関する国の技術的助言です。
観光庁公式ページを確認する

HOSOYAN

ShuJu不動産のディレクター。この世に生を受けてから、集団生活の中で育った逆箱入り息子。学生寮とシェアハウスを交互に繰り返した結果、未だに一人暮らしを経験したことがない既婚者。『一人暮らしは未経験だけれど、職人としてリフォームした経験があるので大丈夫!』と本人は意気込んでいた。

CONTACT
お問い合わせ

ShuJuがお住まい・
シェアハウス探しのお手伝いします。
お気軽にご相談ください。