2026.06.09
相続した土地は売るべき?インフレ時代に考える家族向け賃貸という土地活用
「いつかは家を買う」
少し前まで、その言葉には、今よりもう少し現実味がありました。
結婚して、子どもが生まれて、少し手狭になった賃貸を出て、自分たちの家を持つ。もちろん、誰もがそうするわけではありません。けれど、人生のどこかに置かれた選択肢として、「家を買う」という言葉は、今よりずっと手の届く場所にあったように思います。
ところが最近、その選択肢は少しずつ遠ざかっています。
食品も、光熱費も、建築費も、住宅価格も上がっている。ニュースでは「インフレ」や「物価高」という言葉が繰り返されます。言葉だけ聞くと大きすぎて、自分の生活とは少し距離があるように感じます。けれど、スーパーで卵の値段を見たり、電気代の明細を開いたり、住宅情報サイトで中古マンションの価格を眺めたりすると、急にその言葉は生活の真ん中に座り込んできます。
家を買うことは、以前より重い決断になりました。
住宅ローンを組むことも、将来の金利を考えることも、子どもの教育費と並べて家計を考えることも、簡単ではありません。
では、家を買いにくくなった家族は、どこに住むのでしょうか。
家族がいなくなるわけではありません。子ども部屋が必要なことも、収納が足りなくなることも、保育園や学校区を気にすることも、在宅勤務の場所に困ることも、なくなりません。
変わるのは、住まいへの需要ではなく、その受け皿です。
これまで「いずれは購入」と考えていた家族世帯が、これからは「長く住める賃貸」を選ぶ場面が増えていくかもしれません。そのとき必要とされるのが、家族向け賃貸です。
一方で、家族向け賃貸は、単身者向け物件に比べて供給されにくい住宅でもあります。広い面積が必要で、戸数を多く取りにくく、表面利回りだけを見るとワンルームより低く見える。
つまり、つくる側からすれば、少し面倒です。
でも、だからこそ足りなくなる。
相続した土地。
空き家になった実家。
古い家が建ったままの土地。
使い道を決めきれずにいる不動産。
それらを、ただ売るのではなく、家族が長く住める賃貸住宅として活かすことはできないでしょうか。
この記事では、インフレ時代の土地活用として、家族向け賃貸という選択肢を考えていきます。
「家を買う」が、少し遠くなった時代
インフレという言葉は、どこか経済ニュースの中だけにある言葉のように見えます。
けれど実際には、生活のかなり近いところまで入り込んできています。食費が上がる。光熱費が上がる。外食を控える。旅行を迷う。そうした小さな判断の積み重ねの先に、住宅購入という大きな判断があります。
家を買うには、物件価格だけではなく、諸費用、引っ越し費用、家具家電、修繕費、固定資産税、住宅ローンの返済など、さまざまなお金が必要です。
さらに近年は、建築費や住宅設備、内装材、人件費も上がっています。新築住宅だけでなく、中古住宅を買ってリフォームする場合にも、以前より総額が大きくなりやすくなっています。
「買えるかどうか」だけでなく、「買ったあとも無理なく暮らせるか」が問われる時代になりました。
特に家族世帯にとって、住宅購入は人生の中でも大きな決断です。子どもの教育費、車の維持費、親の介護、将来の転職や収入の変化。そうしたものを考えると、住宅ローンを長期間背負うことに慎重になる人が増えても不思議ではありません。
かつては「家賃を払い続けるくらいなら買った方がいい」と言われることもありました。
しかし、住宅価格が高くなり、金利の先行きにも不安がある時代には、その言葉だけで判断することは難しくなっています。
買うことが正解とは限らない。
借り続けることが失敗とも限らない。
住まいの選び方そのものが、少しずつ変わり始めています。
参照;クロスの糊がない? 建築費高騰と資材不足のいま、住まいづくりで考えたいこと
家族は減らない。住まいの選び方が変わるだけ
家を買いにくくなったからといって、家族の住まいに対する需要が消えるわけではありません。
子どもが生まれれば、荷物は増えます。ベビーカーを置く場所が必要になります。子ども部屋も、収納も、家族で食事をする空間も必要になります。
在宅勤務がある家庭では、仕事に集中できる場所も必要です。リビングの端でパソコンを開くことはできても、それが毎日続くと、暮らしと仕事の境目は少しずつ曖昧になります。
家族にとって住まいは、ただ寝る場所ではありません。
子どもが朝起きて、学校へ行き、帰ってきて、宿題をして、ご飯を食べて、眠る場所です。親が働き、休み、生活を立て直す場所です。毎日の小さな繰り返しを支える器です。
だからこそ、家族世帯は住まいに対して多くの条件を求めます。
学区はどうか。
保育園やスーパーは近いか。
収納は足りるか。
自転車は置けるか。
隣や上下階への生活音は気にならないか。
子どもが成長しても住み続けられるか。
これらは、単身者向けの賃貸物件では満たしにくい条件です。
つまり、住宅購入が難しくなるほど、「買わなくても家族で安心して暮らせる賃貸住宅」の価値は高まっていく可能性があります。
ここに、家族向け賃貸の需要があります。
家族向け賃貸は、なぜ供給されにくいのか
家族向け賃貸には需要があります。
ただし、需要があるからといって、すぐに供給が増えるわけではありません。むしろ、家族向け賃貸は供給されにくい物件タイプです。
理由はわかりやすく、広さが必要だからです。
ワンルームや1Kであれば、同じ土地に多くの戸数を入れやすくなります。戸数が多ければ、家賃収入の見込みも立てやすく、表面利回りも高く見えやすい。土地活用としては、数字の説明がしやすいのです。
一方で、家族向け賃貸は2LDKや3LDKが中心になります。1戸あたりの面積が広くなるため、同じ土地でも戸数は少なくなります。
水回りも、収納も、共用部も、駐輪場も、それなりに必要です。子どものいる家庭が暮らすことを考えれば、防音や生活動線への配慮も求められます。
その結果、建築費は上がりやすく、戸数は増やしにくく、表面利回りはワンルームより低く見えやすくなります。
言ってしまえば、家族向け賃貸は少し不器用です。
数字だけを並べたとき、ワンルームほどきれいに見えないことがあります。短期的な収益性を重視する場合には、選ばれにくいこともあります。
けれど、不器用だから価値がないわけではありません。
むしろ、つくりにくいからこそ、足りなくなる。
足りないからこそ、選ばれる余地が生まれる。
土地活用を短期の利回りだけで見るのではなく、長く安定して貸し続ける視点で見るなら、家族向け賃貸には十分に検討する価値があります。
利回りだけを見ると、家族向け賃貸は少し不器用に見える
土地活用を考えるとき、多くの方がまず気にするのは利回りです。
当然のことです。建築には大きな費用がかかります。借入をする場合もあります。毎月の返済や修繕費、固定資産税、管理費を考えると、収支が合うかどうかは非常に重要です。
ただし、利回りにはいくつかの見方があります。
表面利回りは、年間家賃収入を物件価格や建築費で割ったものです。数字としてはわかりやすい一方で、空室期間、修繕費、募集費用、原状回復費用、管理費などは十分に反映されていません。
ワンルームは、表面利回りが高く見えやすい物件タイプです。戸数を多く取れるため、年間家賃収入を積み上げやすいからです。
一方で、入退去が多ければ、そのたびに募集費用や原状回復費用がかかります。空室が続けば、当然収入は減ります。
家族向け賃貸は、表面利回りではワンルームに劣る場合があります。
しかし、家族世帯は一度住み始めると、長く住む傾向があります。子どもの学校区、生活環境、通勤、保育園、近隣との関係。暮らしの根が張るほど、簡単には引っ越しにくくなります。
長期入居が続けば、空室期間や募集費用を抑えやすくなります。原状回復の回数も少なくなります。家賃収入も安定しやすくなります。
つまり、家族向け賃貸は、短距離走ではなく長距離走に近い土地活用です。
派手な数字は出にくいかもしれません。けれど、地域に合った計画ができれば、長く安定して収益を生む資産になる可能性があります。
家族向け賃貸に必要な土地の広さはどのくらい?
4人家族で賃貸で住み続けたいって思ってる人。賃貸vs持ち家論争で「賃貸が自由でいい」派、ちょっと聞いてほしい。そもそも70㎡以上のファミリー向け賃貸って首都圏で異常に少なくて、ペット可とか駅近とか条件足した瞬間、選択肢が片手で数えられる現実があるんだよね……
— 宅建ママ (@takkenmama) June 3, 2026
では、家族向け賃貸を考えるには、どのくらいの土地が必要なのでしょうか。
結論から言えば、まず目安になるのは200㎡以上の土地です。200㎡は約60坪です。
この規模があれば、土地の形や前面道路、用途地域、建ぺい率、容積率によっては、戸建賃貸、小規模な長屋、メゾネット、2LDK中心の低層賃貸などを検討できる可能性があります。
もちろん、200㎡あれば必ず家族向け賃貸が建てられる、という意味ではありません。土地の条件によっては難しい場合もあります。
ただ、「検討を始める目安」としては、200㎡以上というラインはわかりやすい基準になります。
さらに300㎡以上、約90坪以上の土地がある場合は、より具体的に計画を立てやすくなります。2LDKや3LDKを中心とした複数戸の賃貸住宅、メゾネット、戸建賃貸の組み合わせなど、選択肢が広がります。
500㎡以上、約151坪以上の土地があれば、複数戸の家族向け賃貸に加えて、駐車場や駐輪場、共用スペースを含めた計画も考えやすくなります。
賃貸マンションの平均的な敷地面積として、約257.55坪というデータもあります。ただし、これは大型物件も含んだ平均です。実際には、200㎡から500㎡未満の土地でも賃貸住宅の計画は多く、家族向け賃貸も土地条件によって十分に検討できます。
大切なのは、平均値だけを見て「うちの土地では無理だ」と判断しないことです。
土地活用は、広さだけで決まりません。
形が良いか。
道路にどう接しているか。
用途地域はどうか。
建ぺい率と容積率はどれくらいか。
周辺にどんな賃貸需要があるか。
駐輪場や駐車場をどう確保するか。
同じ200㎡でも、活用しやすい土地と、慎重に検討すべき土地があります。同じ300㎡でも、ワンルーム向きの土地と、家族向け賃貸に向いた土地があります。
だからこそ、面積だけで判断せず、土地の性格を見ることが大切です。
200㎡以上の土地や家屋があるなら、確認したいこと
200㎡以上の土地や家屋をお持ちの場合、まず確認したいのは「何が建てられる土地なのか」という点です。
土地は、ただ広ければ自由に建てられるわけではありません。
用途地域によって、建てられる建物の種類や規模が変わります。建ぺい率や容積率によって、建物の大きさも変わります。前面道路の幅や接道条件によっても、計画できる建物は変わります。
また、家族向け賃貸では、周辺環境も重要です。
駅から近いことはもちろん魅力ですが、家族世帯の場合はそれだけではありません。学校、保育園、スーパー、公園、病院、ドラッグストアなど、日常生活に必要な場所が近くにあるかどうかが大切です。
子育て世帯にとって、毎日の暮らしやすさはとても大きな判断材料になります。
さらに、駐輪場や駐車場の確保も重要です。京都のように自転車利用が多い地域では、家族全員分の自転車を置けるかどうかが住み心地に直結します。
古い家屋がある場合は、建物を活かせるのか、解体して建て替えるべきなのかも検討が必要です。
「古いから解体する」
「空いているから売る」
「とりあえず駐車場にする」
そう決めてしまう前に、家族向け賃貸として活用できる可能性を一度確認しておくことをおすすめします。
相続した土地は、売る前に「貸す未来」も想像してみる
相続した土地や家屋は、扱いが難しい不動産です。
思い出がある。
でも住む予定はない。
管理は大変。
税金はかかる。
売るには少し抵抗がある。
けれど、空き家のまま置いておくのも不安。
相続不動産には、感情と現実が一緒に乗っています。だからこそ、判断が遅れやすくなります。
もちろん、売却が最適な場合もあります。相続人が複数いる場合や、管理が難しい場合、資金化した方がよい場合もあります。
ただ、売却だけが答えではありません。
立地や土地条件が合えば、相続した土地を家族向け賃貸として活用し、継続的な収益を生む資産に変えられる可能性があります。
特に、住宅地として落ち着いたエリア、学校や生活施設が近いエリア、家族世帯が長く住みやすいエリアでは、ファミリー向けの賃貸住宅が選ばれる可能性があります。
相続した土地をどうするか。
これは、「売るか、持つか」だけの問題ではありません。
貸す。
建て替える。
一部を活用する。
将来の売却も見据えて設計する。
家族で収益を分ける形を考える。
選択肢はひとつではありません。
そして、選択肢は早く考えるほど多く残ります。
相続が発生してから慌てて考えるよりも、相続前から方向性を整理しておく方が、冷静に判断しやすくなります。
空き家・古家付き土地も、活用できる可能性がある
空き家になった実家や、古い家が建ったままの土地は、持っているだけで少しずつ負担になります。
換気をしなければ傷む。
草木は伸びる。
近隣への配慮も必要になる。
固定資産税もかかる。
台風や地震のたびに心配になる。
使っていない不動産は、静かにそこにあるようで、実はずっと管理を求めてきます。
だからといって、すぐに売却や解体を決める必要はありません。
古家付き土地の場合、建物の状態によってはリノベーションして貸すことも考えられます。あるいは、建物を解体して、家族向け賃貸として新しく活用する方がよい場合もあります。
戸建賃貸、テラスハウス、メゾネット、低層アパート。土地の形や周辺需要によって、活用方法は変わります。
大切なのは、建築会社に相談する前、解体する前、売却を決める前に、不動産としての可能性を整理しておくことです。
建てられるものと、貸せるものは違います。
建築として可能でも、周辺需要に合っていなければ空室リスクがあります。逆に、大規模な建物は難しくても、戸建賃貸や小規模な家族向け賃貸なら相性が良い土地もあります。
土地には、それぞれ向いている使い方があります。
家族向け賃貸に向いている間取りと設備
家族向け賃貸を考えるとき、大切なのは「豪華な物件」をつくることではありません。
必要なのは、家族が長く住める普通に良い住まいです。
たとえば、2LDKや3LDK。
子どもが小さいうちは一部屋を家族で使い、成長に合わせて子ども部屋にできるような間取り。
在宅勤務にも使える小さなスペース。
季節物や子どもの荷物をしまえる収納。
ベビーカーや傘、外遊びの道具を置ける玄関。
家族分の自転車を置ける駐輪場。
上下階や隣室への生活音に配慮した構造。
掃除しやすく、原状回復しやすい内装材。
家族向け賃貸では、見た目の華やかさよりも、暮らしの中で効いてくる工夫が大切です。
たとえば、収納が少ない家は、住み始めてから不満が出やすくなります。玄関が狭い家は、ベビーカーや子どもの靴であっという間にいっぱいになります。駐輪場が足りない物件は、毎日の小さなストレスになります。
家族が長く住むということは、生活の細部が毎日試されるということです。
だからこそ、家族向け賃貸では、間取りや設備の設計がとても重要になります。
家族向け賃貸を検討すべきタイミング
土地活用は、いつ考え始めるかによって選択肢が変わります。
売却を決めたあとでは、貸す選択肢は消えてしまいます。
解体したあとでは、建物を活かす選択肢はなくなります。
相続が発生したあとでは、税金や手続き、家族間の話し合いが重なり、冷静に比較しにくくなることがあります。
だからこそ、次のようなタイミングでは、一度相談する価値があります。
売却を決める前。
解体する前。
相続が発生する前。
空き家の管理に困り始めたとき。
駐車場にしようか迷ったとき。
建築会社に相談する前。
家族で土地の将来を話し合う前。
土地活用は、建てることだけではありません。
売る、貸す、残す、建て替える、管理する。
それぞれの選択肢を比較したうえで、いちばん無理のない形を選ぶことが大切です。
200㎡以上の土地や家屋をお持ちの方へ
相続した土地、空き家になった実家、古い家が建ったままの土地。
不動産は、持っているだけで答えを求めてくる資産です。
売るのか。
貸すのか。
建て替えるのか。
そのままにしておくのか。
どれも間違いではありません。
ただ、何も決めないまま時間だけが過ぎていくと、選べたはずの選択肢が少しずつ減っていくことがあります。
200㎡以上の土地や家屋をお持ちの方、または今後相続予定の不動産がある方は、売却だけでなく、家族向け賃貸として活用できる可能性があります。
特に300㎡以上の土地であれば、2LDKや3LDKを中心とした家族向け賃貸、メゾネット、戸建賃貸など、複数の活用方法を比較しやすくなります。
もちろん、土地の広さだけで答えが出るわけではありません。
用途地域、容積率、前面道路、周辺の賃貸需要、建築費、将来の売却可能性。ひとつの土地には、ひとつではない未来があります。
shujuでは、京都の不動産事情や賃貸需要を踏まえながら、土地活用・相続不動産の活用方法をご提案しています。
相続した土地、空き家、古家付き土地、使っていない土地をお持ちの方は、売却や解体を決める前に、ぜひ一度ご相談ください。
その土地にとって、そして次にそこに住む誰かにとって、無理のない形を一緒に考えていきます。
まとめ
インフレや住宅価格の高騰により、家を買うハードルは高くなっています。
けれど、家族世帯の住まい需要がなくなるわけではありません。むしろ、購入が難しくなる時代には、長く安心して暮らせる家族向け賃貸の価値が高まる可能性があります。
家族向け賃貸は、ワンルームと比べて表面利回りが低く見えることがあります。広い面積が必要で、戸数を多く取りにくく、建築費も高くなりやすいからです。
しかし、長期入居が期待でき、空室リスクや募集費用を抑えやすく、地域に必要とされる住宅になりやすいという強みがあります。
短期的な利回りだけではなく、長期的な安定性で考える土地活用。
それが、インフレ時代における家族向け賃貸のひとつの価値です。
相続した土地、空き家、古家付き土地、使っていない土地をお持ちの方は、売却だけでなく、家族向け賃貸として活用する選択肢もShuJu不動産と検討してみてはいかがでしょうか。



