ShuJu 代表取締役
堀内 翔平 Shohei Horiuchi
京都大学総合人間学部を卒業後、2015年から同大学院人間・環境学研究科で社会学を専攻する傍ら、ルームシェア・シェアハウス運営をサポートする任意団体「オープンシェアハウス サクラ荘」を立ち上げ。そこで出会ったメンバーと共に2023年に合同会社SHUJUを起業。現在、京都大学人間・環境学研究科博士後期課程。京都精華大学講師。
「変わっている」ことを武器に
小中学生時代、私はいわゆる「変わった子」でした。学校の制度や人間関係に適応できず、クラスの同級生と共にうまくやっていくことができない子でした。学校でよくある集団行動やグループワークでは、周囲の生徒たちを無視して、自分の思い込みで突っ走ることがよくありました。
そんな私でしたが、いつしか「変わっている」ことを活かすようになりました。高校に入学してからはディベートと演劇を始め、壇上でのスピーチ、舞台の上での演技のスキルを高めました。スピーチや芝居を通じて、周囲に馴染めない「日常の私」とは別の、「もうひとりの私」に「変身」することができるようになったのです。
大勢の前でパフォーマンスすることが好きになった私は、高校で生徒会長を務めました。壇上で面白おかしく語りかけることで、同級生や後輩たちを笑わせることを貫いていました。
「居場所のない人」にできることを求めて
「変身」することでイキイキと輝ける自分を発見した私も、やっぱり日常的なコミュニケーションでは周囲とどこかズレているところがありました。京都大学に進学してからもそのコンプレックスはなかなか消えず、ふとしたときに孤独感をおぼえていました。
私は私の居場所を求めながら、様々なコミュニティに足を運びました。大学の数あるサークルだけでなく、宗教のコミュニティや、セクシャルマイノリティであることをオープンにしている人が多くいるコミュニティなど、「社会の周縁」にいる人たちの居場所になっているんじゃないかというコミュニティに私は惹かれ、出入りしていたのでした。
そうして出会ったのが「シェアハウス」でした。住みながら外に開き、私と同世代の人たちが集まっているシェアハウスが京都と東京にいくつもありました。住むことを通じて何時間も何日も一緒にいて、腰を突き合わせてまじめな話も他愛もない話も積み重ねていくシェアハウスに、私は強い魅力を感じたのでした。シェアハウスには「スネに傷を抱えた人たち」もよく集まっていて、そんな人たちにとってのアジール的な居場所になっていたのでした。
シェアハウスを通じて、いろんな人にとっての居場所を作れるかもしれない。そう思いました。私は私でふとしたときに孤独を感じていましたが、社会には様々な理由で自動的に「自分は嫌われているんじゃないか」「何か思われているんじゃないか」「馴染めていないんじゃないか」と考えてしまう人がいます。たとえば社会からマイノリティだとみなされるような人は、その人自身が「自分がマイノリティである」という意識(セルフスティグマ)を持たざるをえず、どうしても「馴染めていない」という疎外感や不安をおぼえがちです。
既に大学で「自助グループ」的なサークルを運営していた私は、シェアハウスを立ち上げることで、誰もが孤独にならない、より確かな居場所を作れるんじゃないか、と妄想しました。
シェアハウスの立ち上げ、そして社会学者兼不動産屋へ
そうして私は2015年に「オープンシェアハウス サクラ荘」というシェアハウスを立ち上げ、自らも居住しつつ非営利で運営してきました。私自身、リビングの隣の部屋に住みながら、「24時間いつでも来ていい」シェアハウスとしてひたすらリビングを開放していました。鍵もかけずに「いつでも来ていい」という駆け込み寺式の運営をしていたのです。今となってはだいぶムチャなことをしていたなと思いますが、そこで出会った人たち、得た経験は、いずれもかけがえのないものです。
しかし、それだけでなく私は家族社会学の視点からシェア居住(血縁・結婚に依らない共同生活)を捉えてきました。国民の4人に1人が生涯独身で、夫婦の3組に1組が離婚する現代はもはや「みんなが家族をつくれる時代」ではありません。単独世帯(一人暮らし)が増え続け、今や4割に達しようとしています。社会から孤立する人が増え続けていることは想像に難くありません。孤立を通じて人は精神的にも身体的にも経済的にも困難に陥ってしまいます。
そこで、日本にはシェア居住という選択肢が必要だ、という思いから「日本社会にシェア居住というシステムを普及させること」を使命としてShuJuの立ち上げに至りました。もちろん、孤立を解消するうえでルームシェア・シェアハウスは(有力ではあるものの)手段の一つに過ぎません。人々のニーズに合ったかたちで、より良いコミュニティや場所を実現できるよう、弊社(合同会社SHUJU)は宅地建物取引業者としてShuJu不動産を展開しています。