2026.11.03
京都市の民泊規制案|常駐10m・京町家特例と既存施設への影響
2026年11月2日、京都市は第3回「京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」を開催し、施設内または10m以内の近隣建物への常駐義務などを盛り込んだ規制案を示しました。民泊や簡易宿所の運営だけでなく、京都の京町家・一棟貸し物件の売買にも影響し得る内容です。
ShuJu不動産では、前回の記事「京都市の民泊規制がさらに強化へ」で、第2回検討会議の内容をお伝えしました。今回はその続編として、11月2日の新たな規制案と、市会議員や民間の方々から寄せられた意見、そして不動産市場への影響を整理します。
※本記事は2026年11月3日時点の情報です。現時点で条例改正は成立しておらず、経過措置や特例の詳細を含めて今後変更される可能性があります。
今回の規制案のポイント|何が変わるのか
| 項目 | 示された規制案 | 既存施設の扱い |
|---|---|---|
| 常駐義務 | 原則、施設内または施設建物の境界から水平距離10m以内の近隣建物に常駐 | 経過措置を設けて適用する方向 |
| 住居専用地域・工業地域 | 住宅宿泊事業の新規営業をゼロ日規制または立地規制で制限 | 新たな立地制限は適用しない案 |
| 幅員1.5m未満の路地 | 条件に該当する住宅宿泊事業の新規営業を制限 | 新たな立地制限は適用しない案 |
| 長屋の遮音性能 | 隣戸との界壁について防音構造を求める | 一定の遵守を求める方向 |
| 重要京町家 | 10分・800m以内の駆け付けとICT管理による常駐義務の特例 | 指定・要件により特例を検討 |
| 運営管理体制 | 定期報告・日本語による適切な応対などの要件を検討 | 具体的な制度設計は未定 |
京都市が実際に提示した資料は第3回検討会議の公開資料(資料2「地域の実情を踏まえた民泊規制案」)で確認できます。
原則10m以内の常駐義務|既存の簡易宿所にも影響
前回の段階では「施設内または隣接建物」という方向性が示されていました。今回は、その近隣建物について、宿泊施設がある建物の境界線から水平距離10m以内とする案が示されました。従来の「おおむね10分・800m以内の駆け付け」を認めてきた運営方式とは、考え方が大きく異なります。
複数施設を一つの管理拠点から運営してきた場合や、管理者の常駐場所を建物内に確保できない一棟貸し施設では、運営方法の見直しが必要になる可能性があります。現行ルールで適法に営業している施設も、今回の改正案の影響を受け得る点が重要です。
経過措置の期間と「優良事業者」の扱いは未定
京都市は既存施設に「相当の経過措置期間」を設ける方針ですが、具体的な期間はまだ示されていません。以前の条例改正時の1年9か月という例は挙げられているものの、今回も同じ期間になると決まったわけではありません。
この点について、京都党・大津裕太市議(中京区選出)は、投資回収や資金繰りへの影響を踏まえて十分な経過措置を設け、地域との共生に取り組む事業者には個別審査による特例を検討するべきだと述べています。
【民泊規制案への私見】
今回の検討会議で示された規制案には、重要な点で、なお検討中として具体的な内容が示されていないものがある。ひとつは、既存施設に対する経過措置の期間だ。案では「相応の期間」とされ、参考として、前回の改正時には1年9か月の経過措置が設けられたことが記載されている。
今回の経過措置には、事業者が新制度に対応した体制を整えるための準備期間という側面がある。
一方で、既に多額の投資を行っている事業者の経営や資金繰りが、規制の変更によって急激に悪化することを防ぐ視点も欠かせない。そのため、前回と同程度の期間では、必ずしも「相応」とはいえないと考える。
私は、駆け付け体制の強化と再定義を行い、地域の安心を確保したうえで、十分に長い経過措置期間を設けることが、地域と事業者の双方にとって望ましいと考えている。
もうひとつは、既存施設のうち、どのような事業者を「優良事業者」と位置付け、どのような特例措置を設けるかという点だ。
これについては、経過措置期間中に、特例の適用を希望する事業者から、地域との共生に向けた運営体制を改めて申請してもらい、その実効性を個別に審査する仕組みがよいのではないか。
形式的に体制が整っているかだけではなく、地域の不安や課題に実際に対応できるかを見極め、特例の適用を判断すべきだ。
— 大津 裕太(京都市会議員/地域政党京都党/中京区選出) (@yuta_otsu)
November 3, 2026
大津市議はnoteの記事でも、常駐場所の形式だけでなく、苦情への対応履歴や現地対応の実効性を確認する重要性を論じています。いずれも議員個人の意見であり、京都市の決定事項ではありません。
京町家の例外|「重要京町家」なら一律に免除されるのか
今回の資料では、京町家の保全に配慮した特例も示されました。対象として挙げられているのは、京町家条例に基づき指定される「重要京町家」です。重要京町家では、現行の10分・800m以内の駆け付け体制と、出入口カメラなどICT機器を活用した厳格な管理体制を組み合わせることで、施設内・近隣建物への常駐義務に代わる方法を認める案です。
一般的な京町家すべてが自動的に特例対象となるわけではありません。京町家としての外観や築年数だけでなく、指定の有無と実際の管理体制が判断材料になります。今後、宿泊用京町家の評価では、文化的価値だけでなく、規制上の特例を利用できるかどうかが収益性に影響する可能性があります。
住宅宿泊事業の新規開業を制限|用途地域と路地幅員
住居専用地域・工業地域は新規営業の制限を検討
第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、工業地域について、住宅宿泊事業の新規営業を制限する案が示されています。規制方法は営業日数をゼロとする方法や立地規制などを検討中です。既存の届出住宅にはこの新たな立地規制を適用しない案ですが、常駐義務など別の規制まで免れるという意味ではありません。
資料に示された用途地域の面積割合は、市街化区域の約52.4%です。ただし、面積割合と施設数の割合は異なり、すべての地域・物件が同じ条件になるわけでもありません。工業地域への規制については、その必要性を裏付ける根拠も引き続き議論されています。
幅員1.5m未満の路地は新規届出を制限する案
宿泊施設から道路に至るまで、全長にわたって有効幅員1.5m以上を確保できない路地にのみ接する敷地では、住宅宿泊事業の新規営業を制限する案です。こちらも既存施設は新たな立地規制の対象外とする方向です。京都市中心部の路地奥物件では、接道条件が将来の用途選択に影響する可能性があります。
長屋の遮音規制|既存施設でも改修が必要になる可能性
長屋の一部を簡易宿所・住宅宿泊事業として利用する場合、隣戸との界壁について建築基準法第30条と同等の防音構造を求める案です。既存施設にも一定の遵守を求める方針が示されており、具体的な改修要件や猶予期間は今後の検討事項です。
築年数の古い長屋は防音工事に相応の費用がかかる場合があります。重要京町家として常駐義務の特例を認められたとしても、遮音規制まで自動的に免除されるとは限らず、別途確認が必要です。
監視指導の実効性をどう高めるか|河村りょう市議の意見
京都市の会議資料によると、2026年4月以降、9月末までに33施設に対して業務停止を含む行政処分が行われました。また、面接・駐在に関する抜き打ち検査では173施設のうち150施設に義務違反が認められたとされています。
ただし、検査対象は全施設から無作為抽出されたものとは限らず、この87%という割合を京都市全体の民泊の違反率とみなすことはできません。規制を強くすることと、違反行為を適切に把握・是正できることは分けて検討すべきでしょう。
京都党・河村りょう市議(左京区選出)は、規制の厳格さだけでなく、悪質な営業を実際に発見し、やめさせる仕組みを重視する意見を投稿しています。
これまでの規制でも、「悪質な民泊をどう取り締まるのか」が争点だった。今回、常駐義務が町家を除き原則全てが適用となったが、問題の本質はそこではない。どう発見し、やめさせるかだ。
以前も日本で一番厳しい規制と言い張って対策が遅れた結果が今だ。京都市は指摘や過去から学ばなければならない
— 河村りょう(京都市会議員/地域政党京都党/左京区選出) (@sakyo_kawamura)
November 3, 2026
新たな義務を設ける一方、行政の監視体制や違反施設への対応が追い付かなければ、適法な事業者ほど負担が大きくなるという問題が生じかねません。制度の実効性と公平性の双方を検証する必要があります。
事業環境への反発と、その声を受け止める議員の姿勢
X上では、今回の民泊規制の方向性に関連して、京都の事業環境や外部から事業を行う人々に対する姿勢への不満も示されています。以下はGENKI氏による投稿です。表現には強い批判が含まれますが、個人の意見であり、事業者全体の総意を示すものではありません。
京都は新しいものを嫌う不寛容な自治体だと思うので、勝手に沈んでいけばいいんじゃないかな。もうこんな方針もなく、場当たり的な事しかできず、外からの人間に対して意地悪、いけずしかないような街に住む意味がないので、近い将来拠点を移す事も視野に入れんとだめかな。この街で商売はできん。
— GENKI (@ggggenki)
November 2, 2026
これに対し、無所属・かたぎり直哉市議(北区選出)は、京都についてそのような印象を持つ人の声が実際にあることを受け止める必要がある、という趣旨の投稿をしています。
否定したいところやけれど、実際にそう感じられてる方がいはるという事実は、受け止めんといかんなあ。
元気さんだけでなく、そういうお声は聞くので。— 片桐直哉(京都市会議員・北区) (@n_katagiri)
November 2, 2026
近隣住民が安心して暮らせる環境を守ることは当然重要です。同時に、ルールを守り、建物の維持や地域経済に貢献してきた事業者の声にも耳を傾ける必要があります。規制への賛否だけでなく、何を改善し、どのような事業を残していくのかが問われています。
ShuJu不動産の視点|民泊物件が売却市場に流入する可能性
今回の規制案が成立し、既存施設にも新たな常駐義務が及ぶ場合、一棟貸しの小規模施設などでは人件費や管理拠点の確保が採算を左右する可能性があります。規制に対応しきれない事業者の中には、宿泊事業から撤退し、売却や長期賃貸への転用を検討するケースが出てくるかもしれません。
ただし、2026年11月3日時点で民泊物件の売り出しが急増した、あるいは価格が下落したと断定できる根拠はありません。今後の供給量や価格は、条例の最終内容、経過措置、物件の立地と住宅需要などによって異なります。
不動産の価値は、宿泊施設としての収益だけで決まるものではありません。宿泊としては採算が取りにくい京町家が、自己居住や長期賃貸には適している場合があります。一方、規制適合性の高い既存宿泊施設に希少性が生まれる可能性もあります。
「民泊として売れるか」だけでなく、「住む・貸す・継続運営する」の複数の出口を比較することが、今後の京都の不動産取引では重要になると考えます。
民泊・簡易宿所付き物件を購入する前の確認事項
- 現在の許可・届出の種別と、用途変更・譲渡・事業承継時の取扱い
- 施設内または10m以内に適法な常駐場所を設けられるか
- 重要京町家の指定の有無と、特例に必要な管理体制
- 用途地域、接道条件、路地幅員、建築基準法・消防法への適合
- 長屋の場合の界壁性能と必要な改修工事費
- 新たな人員配置・運営費を織り込んだ収支と、住宅転用した場合の賃料・売却価格
なお、既存施設への配慮が、所有者や事業者の変更後にも同じ条件で引き継げるかは、現時点で確定していません。売買契約の前に京都市の担当部署へ個別確認することを推奨します。
今後の予定|条例改正はまだ成立していない
- 2026年11月:パブリックコメント実施予定
- 2027年1月:意見募集を踏まえて規制案を取りまとめる予定
- 2027年2月:京都市会に条例改正案を提出予定
上記はいずれも2026年11月3日時点で示された予定であり、条例の内容・施行日や既存施設への経過措置は確定していません。
まとめ|京都の民泊と不動産市場は、制度の具体化が重要な局面に
京都市の新たな規制案は、住宅地の生活環境を守るための取組である一方、京町家を含む既存宿泊施設の運営方式に大きな変更を求める可能性があります。重要なのは、違反施設への実効的な対応と、適正に運営してきた施設への公平な配慮を両立させることではないでしょうか。
ShuJu不動産では、民泊・簡易宿所の継続可能性だけでなく、住宅としての再活用や売却市場への影響についても、今後の制度改正と実際の取引動向を確認していきます。
関連記事:京都市の民泊規制がさらに強化へ|簡易宿所の常駐義務案と既存の民泊物件への影響
参照資料
- 京都市・第3回京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議(資料2掲載)
- 大津裕太市議のnote「民泊の規制強化 ~京都市の規制案(令和8年11月2日時点)~」
- 議員・民間のX投稿:各該当箇所に埋め込み表示
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