2023.08.03
【ご成約済み】高野川沿いの一軒家の紹介から見る、部屋が分かれてなくてもシェアハウスする方法!
シェアハウスを研究する社会学者、堀内です。
今回は社会学者らしく、物件紹介を通して、住人同士のあるべき関係について考えていきます。
まずは間取りからご覧ください。
恒例の横からみた間取りもご覧ください。
右側が玄関です。
やや暗いですが、大まかな間取りは掴めるでしょうか。
残念ながら撮影時には電気が通っていない物件だったことをご了承ください。
一見シェアハウス向きではないが
広さはそれなりにあるものの、2階を含めて部屋はあまり独立していません。
シェアハウスの場合、独立した部屋数=人数というのが一つのセオリーです。
そうすると、この間取りはせいぜい2階を二つに分けて、住めるのは2人、ということになります。
しかしそもそもこの家は昭和43年築の木造物件です。
この時代のよくある間取りとしてたとえば、部屋が連続している〝続き間〟などが挙げられます。
部屋同士の境界線をはっきり区切らないことで、部屋を拡張して使えたり、風通しや日当たりを確保したりできるといったメリットが続き間にはありました。
京都には50年以上も前に建てられた木造戸建てが多く現存しています。
シェアハウスを広めたいShuJuとしては、そのような間取りでもシェアができる可能性を追求せねばなりません。
そこで今回のような、部屋があまり分かれていない物件でシェアハウスするにはどういう空間の使い方できるのか?
はたまた、分かれていない部屋の住人同士はどういう関係であるべきなのか?
そういった問いを考えていきたいと思います。
前置きが長くなったが
とりあえず今回の物件を見ていきましょう。
高野川沿いにあがっていった先にある一乗寺駅から徒歩8分。
逆光が照りつける中で撮ることになってしまいました。
南北にベランダがついているので日当たりはご安心ください。
門扉を開くと、敷き詰められた石と緑色の石レンガ。
洋風の雰囲気です。
入ってみると土間はそこそこに、一面木造の景色です。
すぐ左手のキッチンは見ての通り広く使えます。
冷蔵庫をキッチンの隣に置けば料理好きの方には使いやすいのではないでしょうか。
階段下収納も。
なんにせよ、玄関入ってすぐに8帖のダイニングキッチンという間取りはシェアハウスの観点から見ると良いですね。
半ば強制的に顔を合わせざるを得ないことで、自然と交流が生じる間取りになっています。
隣には6帖の和室。
「リビング」的に使ってくつろげそうです。
(電気がつかなかったのでやや暗めです)
さらに奥には洗面所です。こちらは綺麗に使われています。
更に奥があり、区切られています。
お風呂の湿気がこもらない工夫でしょうか。
洗濯機置き場になってます。
奥のドアを出てみると……
木造の棚が備えられていました。
室外の物置ですね。
お風呂もとても綺麗です。
浴室乾燥機つき。
いざとなれば雨の日でも乾かせます。
ついでにダイニングにあるトイレもご紹介。
やはり綺麗に使われていますね。ウォシュレットも完備です。
本物件の設備面で言えば、なんとダイニングキッチンと洗面所に床暖房がついています。
木造だけにすきま風はけっこうありそうですので、寒さに対しては対策されていますね。
その点、暑さに対してはダイニングキッチンの扇風機ぐらいしかないのが気になるところですが。
(呼んだかい?)
以上1階でした。
続いて2階だ
この物件は、廊下ってものが基本的にないので部屋が分かれてないんですね。
なので、「通路」らしいものはこの階段ぐらいです。
ひとまずのぼっていきましょう。すると……
とても狭いところに二つの扉があります。
とにかく廊下部分を減らして、部屋のために空間を配分したようですね。
せっかくだから俺は左の扉を開けるぜ
ガラガラッ。
分かれてるのにほぼ繋がっとる。
↑この部分の間取りだけ見ていると気がつきませんでしたが、6帖洋室と4帖洋室との間には戸がついていませんでした。
後からつけることはできるでしょうが……
本当に2人でシェアできるのか?
気を取り直して、南の側から部屋を見ていきます。
ありがたい収納がついています。
でもこれ、部屋じゃなくて廊下です。
部屋同士を繋いでいるわけでもないので、「廊下」と言うのも語弊がありますが。
窓を開けると大きなベランダが広がっています。
南側なので大量の洗濯物もよく乾くでしょう。
南側に空き地があるので、なおさら陽当たりが良さそうです。
なぜか蛇口もあります。
北側も見ていきましょう。
広々とした6帖部屋です。
綺麗なフローリングで収納もしっかりありますので、余裕で住めます。
最後に、北にある3帖の洋室です。
収納があるのは素晴らしいんですがこれもなんか居室という感じではないですね。
ベランダに出ると、玄関から見えていたところに出ます。
屋根がちゃんとついていて、やはり服を干せます。
以上が2階でした。
プライベートの境界線はどこか?
みなさんは仮にこの家に2人で住むとしたら、2階をどのように使いますか?
いつものシェアハウス的な考え方でいけば、とにかく部屋が分かれているかどうかを重視します。
要するに各人のプライベートが確保できることが重要なわけですね。
しかし、北側3帖の洋室や、南側の廊下は居室とは言い難い感じでした。
そう考えると次のような部屋分けになるのではないでしょうか。
赤で囲った部分のプライベート空間と、青で囲った部分のプライベート空間のそれぞれがあるという感じの分け方です。
南側の部屋は狭いですが、ベランダがそれぞれにあるうえに階段からは一応それぞれの部屋に分かれています。
なるほど、一見合理的な分け方に見えます。
ただ、先ほど書いたように、結局6帖洋室と4帖洋室は繋がっちゃってます。
この「繋がっちゃってる」のを無理に分ける必要が本当にあるのでしょうか?
こう考えてみてはどうでしょう。
先ほどとは色の意味が異なります。赤色で囲っている部分がプライベート空間で、青色がパブリックな空間という分け方になります。
この場合、「プライベート空間」というのは居室を意味しません。
むしろ、オモテに出して見せたくないものを仕舞う「バックヤード」のような使い方と言えるでしょう。
ではこのとき、青色の「パブリック空間」をどのように住まうことになるのでしょうか?
ウチ/ソトが曖昧だった時代
核家族化・単身化を経た現代日本を生きている私たちにとっては、家のウチ/ソト、そして部屋のウチ/ソトがプライベートとパブリックを分ける境界線だという前提で生きています。
しかし、冒頭で続き間の話でも書きましたように、かつての日本では部屋同士の境界線を自由に操るくらしが実践されてきました。
たとえば、客間や縁側のような、家の中に「ソト」を呼び込むような機能があるのは普通だったわけですね。
地域社会がまだ生きていた分、ウチ/ソトの境界線が弱かったと言えるでしょう。
これは家の中でも同じことです。
順位制とナワバリ制
家の中でのウチ/ソトを考えるヒントとして、建築学者の小林秀樹による「順位制/ナワバリ制」という二分法を紹介しましょう。
小林によれば動物の社会には大きく2タイプがあり、群れ生活を営むタイプは「順位制」を採用する一方、動物たちが互いにエサを得るための領域侵害しない「ナワバリ制」の社会もあるといいます。
これを人間の住まいに当てはめると、子ども数も多く個室がなかった昔の住居は「順位制」、個室がある現代の住居は「ナワバリ制」に対応することになります。
昔の住居では、空間を共有しながらも争いが起きないよう、家族の中ではタテ社会的な関係が築かれていたわけです。
食事を一番に手をつけたり、「一番風呂」に入るのが家長(父親)であったことが象徴的な例でしょう。
時代遅れな話に聞こえるかもしれませんが、順位があり、役割がはっきり決まっていることで、空間を共有していても争いが起きずに秩序が保たれていたわけです。
これに対して、現代の若者同士がするシェアハウスなどは対等な関係であることが多いでしょう。
対等と言うと一見良いことのように聞こえますが、先ほどの「順位制」とは違って役割がはっきりしていません。
皆が自立した一個人として扱われますので、空間を共有してしまうと自分の個人空間が侵されているような感覚になってしまいます。
このとき、空間を区切って自分だけの個室=ナワバリを用意するのが合理的になります。
ナワバリ制においてはそもそも空間を共有していないため、家の中でコミュニケーションを取らなければならないときは、言葉によって明確に意志を表明し、お互いの合意を目指すことが必要になってきます。言わば民主主義的な社会です。
もちろん、現代の住まいでも家族が集まるリビングや食事室がありますので、そこに半分は順位制が機能しています。
たとえば、家族が食卓で座る位置が決まっていることはよくあることですし、料理を作る人はどうしても固定しがちだとは思います。
このように、完全には「ナワバリ制」に移行しないなかで、どのように共同生活を営んでいくかが現代の課題になるわけです。
むしろ完全に「ナワバリ制」に移行してしまえばお互いが接触しないわけですから、それは人々の孤立を生むのではないでしょうか。
実際、日本社会では今、どんどん単身者が増加していき、住まいとしてはワンルームマンションばかりが増加しています。
「自由で対等」であることと引き換えに、人々は孤立していっているわけです。
だからこそ、私たちShuJuはシェアハウスを推進しているのです。
「対等」な関係だけがよい関係ではない
そしてもちろん、シェアハウスの住まい方も、孤立を推し進めるものであってはなりません。
日本でも都市部ではシェアハウスが普及しつつありますが、タコ部屋に人を詰め込む「貧困ビジネス」の温床にもなっています。
それは交流を生むためのものではなく、ワンルームマンションの劣化版なだけです。
そうではなく、プライベート空間は「バックヤード」に押し留めておいて、それ以外の全体が「パブリック空間」になっているような、そんな住まい方もありうるのではないかということを私は今回提示しています。
このとき、住人たちの関係は必ずしも「対等」なものではないかもしれません。
「女性が家事、男性が仕事」のような役割を強制的に固定してしまうことはやはり間違っています。
ただ、家の中での役割が分かれていること(たとえば、マネジメントをする側とされる側に分かれていること)自体は、そんなにおかしなことではないでしょう。
現代においても、タテ社会的な役割分担は形を変えて残っていて然るべきです。
なぜなら、誰もが自分の意志を表明し、民主的に「対話」ができるという状態を想定するのは難しいからです。
「対話」ができる人たちだけで住むのならば、それぞれの個室がありつつ、コミュニケーションを取るべきときに取る、ということができるのかもしれませんが。
言葉でやり取りすることがニガテな人もいる中では、むしろ「あうんの呼吸」でお互いが前提を共有できているような、「役割分担」の関係を営んでいくことも重要なのではないでしょうか。
今回の高野川沿いの物件は、きちんとお互いの役割を認識しながら生きていける(必ずしも「対話」しなくてもよい)関係の人たちに向いている家だと思います。
【参考文献】
小林秀樹、2013、『居場所としての住まい――ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層』新曜社。
篠原聡子、2008、『住まいの境界を読む 新版——人・場・建築のフィールドノート』彰国社。
最後に物件のまとめです
京都市左京区高野泉町 一軒家
築年月:昭和43年11月
間取り:4SDK
面積:43.63㎡
構造:木造2階建て
最寄り:叡山電鉄「一乗寺」駅 徒歩8分
賃料:65,000円
敷金:2ヶ月
礼金:2ヶ月
契約期間:2年
取引態様:仲介
DKと洗面所に床下暖房、浴室乾燥機、室内に洗濯機置き場と物干、照明器具は残置物
お問合せはShuJu不動産まで。
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