2023.12.09
左京区で日本酒の角打ちとアテが楽しめる┃発酵室よはくさんインタビュー
左京区に、新しい拠り所。
今回お邪魔したお店の名前は「発酵室よはく」。
ここでは角打ちも楽しめ、
日本酒の魅力を存分に堪能できます。
発酵食品を使用したつまみは、日本酒との調和が美しい。
酒と料理の奥深い融合が、楽しい余韻を残します。
料理と日本酒、心の交流が織り成す、特別な場所です。
インタビュー、構成:大美千尋
お店の開業を考えていらっしゃるお客様にむけて、
ShuJu不動産では、自身の通うおススメのお店を紹介していきます!!
今回は、日本酒の角打ちが発酵食と一緒に楽しめる「発酵室よはく」の真野遥さんをインタビューします。
ー本日はお時間頂きありがとうございます。まず、発酵食品やお酒を扱うお店を開くことになったきっかけのお話を教えて下さい!
真野さん:元々は発酵食の料理教室や、レシピ本を出したりしていたんです。それをお店化したという流れですね。
ー元々料理関係のご職業だったんですね。食にまつわるお仕事を始めたきっかけが気になります。
真野さん:話すと長くなっちゃうんですが、最初は漠然とものづくりに興味があったんです。でも就活があまり上手くいかず、結局商社に就職しました。その仕事というのが結構悩むことも多くて……、色々と思い悩みながら生活してました。
そんな中、自分で好きな料理を作って、食べて、飲むことがだけが唯一の楽しみになり、料理って生活に一番近いものづくりなのかもしれないと気付いて。もっと食のものづくりというのをやってみたいと思ったのが始まりでしたね。
ーそんな歴史が。その苦しかった期間によって今の真野さんの姿やお店があるのだと思うと、より尊みを感じますね。
こちらで出されているお料理ですが、やっぱりお酒とのペアリングを考えられたものが多いんですか?
真野さん:そうですね。私が結構お酒好きなので。特に日本酒が食事に合わせやすくて好きで、それで日本の酒蔵さんを巡っているうちに、発酵そのものに興味が湧いてきたんです。
ー発酵との出会いは酒蔵さんだったんですね!それを食事に取り入れたら面白そう、みたいな感じで発酵食に発展したんでしょうですか。
真野さん:やっぱり、日本酒と発酵食って相性が良いですし、このペアリングでやっていこうと。
ーこちらが真野さんのレシピ本なんですね。東京農業大学の准教授さん監修……。(數岡孝幸 さん)
真野さん:社会人になってから通ってた時期があったんです。その時の先生ですね。
ー先生も嬉しいでしょうね、教え子がレシピ本を出版するなんて。掲載レシピ数も凄いです。日本酒だけじゃなくてジンとか、洋酒にも合うおつまみも。合うお酒の相性別に分類されてるんですね。とても分かりやすいです。
真野さん:200レシピは大変でした(笑)。これはもう大体のお酒を網羅出来てるかと思います。
ーすごすぎる。お酒好きな方は必読ですね。
お酒やおつまみ関係のお仕事としては、レシピ考案がまず始めの1歩だったんでしょうか?
真野さん:最初はがっつり料理をする!という感じでもなく、フードコーディネーターと言って、広告などで料理の演出をするような職業の養成学校に入ったんです。そこで色々学んだり、レストランのキッチンで経験を積んだり、料理研究家さんのアシスタントをしたりと修行みたいな事をして……。
色んな事をしているうちに、見た目の部分じゃなくて中身をやっていきたいと思ったんです。それでレシピっていう部分でものづくりをしていこうと、フードコーディネーターの方から研究家っぽい方へ移りました。
最初は知り合いがやってる日本酒会などのイベントで料理を担当するような機会が多くて、そこから日本酒に合うレシピが生まれていきました。そしたら料理教室をやってほしい、といったような事を言われ、不定期で開催していたのが料理教室の始まりですね。
ーやってくれ、という声から料理教室が始まったんですね。
真野さん:そんな風に、不定期で料理教室を開いたり、レシピ作ったり、日本酒会で料理を作ったりと色んな事をするのは楽しいんですけど、こうやって拠点を持たずにやっていると、私が何者なのか分かって貰いにくいところがあって。結局何がメインなの?みたいな感じで聞かれるのがちょっとなあ……と思い。
それでちゃんと拠点を持って、定期開催の料理教室を始めました。「日本酒に合う発酵食料理のペアリング形式」というピンポイントな教室です。
ーそこまでコンセプトが定まっていると、お酒好きがどんどん集まって来そうですね。
真野さん:最初は全然だったんですけど、だんだんリピーターさんが増えてきましたね。そこで5年間料理教室を続けて、東京でやれる事はもうやり切ったかなと思って京都に来ました。
この日は、ご近所のお店の店主さんが鹿肉を買いにいらっしゃっていた。
ーいらっしゃる方たちを見ている感じ、結構地域のお店さんとの繋がりが濃いんですね。人との距離が近い景色は、左京区らしさを感じます。
真野さん:そうですね。地域のコミュニティに属したいという気持ちがあったので嬉しい事です。
ー人の輪に入っていると、そこからどんどん広がっていくものがあって楽しいですよね。
真野さんは元々東京で活動されていたとの事ですが、京都に移住してすぐにお店を始めたんですか?
真野さん:いえ、京都に来たのが2020年の6月で、当時は京都と東京の二拠点生活をしていました。東京で料理教室やレシピ開発の仕事をしながらという感じです。
京都に住みたいけど、東京で仕事があるしなぁと、行ったり来たりの生活をしていました。でも二拠点生活をしているうちに、もう早く京都に住みたいなと思って。
ー京都がお気に入りだったんですね。どういった所が好きになったんですか?
真野さん:色々あるんですが、鴨川がすごく好きです。自然と街が近い感じが良いと感じます。あと、歴史もあるけど、新しい文化もどんどん生まれてくる。そういった色んなものがごちゃごちゃっとしてる感じとか……若者が多い雰囲気も好きですね。
ー分かります。パッと見京都って、伝統!文化遺産!由緒!というイメージを持ちがちなんですが、意外とカオスなんですよね。学生が多いから活気もあって、常に相反する物同士で化学反応が起こっているような面白さがあります。
真野さん:でもやっぱり二拠点生活って物の移動などで色々と大変でしたね。3年くらいそんな生活をしてたんですが。それで、京都に住むためにお店を始めたみたいな感じです。
ーえっ、京都に住む”ために”始めたんですね!面白い。
真野さん:そうなんです。東京でやっていたような形で仕事をするのは色々とハードルがあって。それでお店やっちゃえば、ある程度収入は得られるかなと思って始めました。
ー思い切りがすごいですね。行動力の化身です。
京都に移住するにあたって、左京区を選んだ理由をお聞きしたいです。
真野さん:元々京都に興味を持ったきっかけというのが、森見登美彦さんの小説だったんです。それで大学生の時に、森見作品に出てくるエリアに来てみたのが初の左京区でした。
それでいいなと思ってちょこちょこ遊びに来ていて、そんなこんなで棘屋さんっていうお店の人と知り合って。
ー出町柳の、無人でサボテンとか売ってらっしゃるお店ですか?一度行った事があります!
真野さん:それです。お店に行ったときに知り合って仲良くなりました。やっぱり一人でも知人が居ると、心強く感じられましたね。
それもあって、京都に来たら毎回出町あたりでゆるゆるする事が多く、愛着や親しみも湧いてきたので、住むなら左京区がいいなと思いました。
ーそれでこのあたりで物件を探されたんですね。
真野さん:はい。二拠点生活の最初の1年くらいはシェアハウスに住んでたんですよね。家具家電が揃ってて初期費用を抑えられるし、家賃も抑えられるので。でも古民家に住みたいという気持ちと、京都にも仕事をする拠点というか、基地みたいなものが欲しいという気持ちがあったんです。シェアハウスだと中々そういう事って出来ないので、物件を探し始めました。
あと、料理教室とかは難しいかもしれないけど、ワークショップが出来るような場所にしたかったんです。ちなみにこの机でよく手仕事会、味噌仕込みやキムチ仕込みとか色々やっています。
画像下の方にちらりと映っているテーブル。
横長尺なので、皆でワイワイ作業が楽しめそうです。
ワークショップ情報はSNSで発信されています。
真野さん:という感じで物件を探していていたところ、棘屋さん経由で知り合った方がこの辺りで事務所を探しているとの事だったので、じゃあ一緒に借りましょうよ~という流れになったんです。
あともう一人、この辺で週末だけお店をやりたいという知人がいたので、じゃあもう一緒にやりましょう~と。
ー人とタイミングにめちゃくちゃ恵まれたんですね。
物件探しはスムーズに進みましたか?
真野さん:最初は左京区以外も下京区とか見てたんです。でもちょっと窮屈に感じたり……
ーこの辺よりちょっと高いですしね。
真野さん:そうですね。それでやっぱり左京区の広々とした感じとか、雰囲気がいいなあと思いましたし、シェアする人たちとの条件もマッチしたので、場所をこの辺りに決めました。
ー食品を扱うお店を始めるにあたって戸建て物件を借りるのって、大家さんや京都市の営業許可的な面でハードルが高かったりするイメージがあるんですが、何か乗り越えた壁はありましたか?
真野さん:そうですね。この物件もがっつり飲食店というのは出来ないんですが、うちは酒屋がメインの角打ち、半飲食店という感じなので。飲食店許可はとってるんですけど、小売りがメインという感じでやれています。飲み屋使いして下さっているお客さんもいらっしゃるんですけど、あくまでも有料試飲、体験できる場所みたいな。あと「飲食店」って大変なので、あまりやりたくないのもあり……。
なので壁を乗り越えたというより、乗り越えられなくてこういう形でやっています。
ー頭脳派ですね、うまいこと抜け道を探したという。これは飲食店を始めようとしている人に超有益な例だと思います。
真野さん:その場で作った手作りのものを出すには、がっつりした飲食店営業許可を取らないといけないんですが、そのためには床の排水設備とかがネックになってくるんですよね。他にも電気系統とかガスとか色々あるので、改装に何百万とかかります。やっぱり居抜きじゃないと厳しい。
どうしようかな~と思って色々調べていたら、3年くらい前に食品衛生法が改正されて、簡易な営業許可みたいなのが新しく定められたのを知ったんです。バーとか喫茶店向けの、調理したものは出さないけどお酒を出す、みたいなお店向けの許可ですね。
最初はこの物件で飲食店営業許可がとれるとは思ってなかったんですけど、こっちの許可ならこの物件でもいけるかもしれないと思って。
ーサーチ力が功を奏したんですね。その許可と重飲食許可の違いというと、お店で調理をするか否かという点が主なんでしょうか?
真野さん:そうですね、基本は盛り付けるだけで出せるものです。やっぱり角打ちなので、基本は販売しているものが中心です。あと何か作りたいものがあったら、近くの飲食店さんにお願いして作って貰って、ここで出すとか……そういった事はオッケーなので、そんな感じでまずやってみようと思いました。
ここで料理したものを出そうとすると、もう床をぶち抜いて、壁もキレイなものにしなくちゃいけなかったりするので。
ー何百万とかかってしまうやつですね。
真野さん:あとここは改装NG物件でもあるので、ここで出来る範囲で工夫してやっていこうと。それもあって、だいぶ初期コストも抑えられましたね。とは言っても、なんだかんだ色々かかりますけど。
ー本当に、頭で勝ったという感じですね。この体験談は、飲食関係のお店を始めようと思っている人にめっちゃ役立ちそうです。
この日頂いた鮒ずし飯チーズケーキ、日本酒のペアリング
ーこのチーズケーキ、めちゃくちゃ美味しいです。鮒ずし×チーズという発酵食品コンビ、やっぱり合うんですね。
真野さん:そうなんです。このチーズケーキは鮒ずしの、漬けているご飯を練り込んで焼いています。
仲良しのパティシエさんと一緒に開発し、東京の工房で作って貰っています。
ー本当に日本酒とよく合いますね。今回の日本酒とつまみのペアリングは、どういった組み合わせなんですか?
真野さん:この花巴、水酛というのは、生のお米を水に漬けて乳酸発酵させた「そやし水」というのを元に発酵させて作ったお酒なんです。室町時代の製法なんですが、色んな菌が関わって出来るので、発酵由来の癖のある香りが出やすいんですよね。それが発酵食、チーズとかと相性がすごく良いです。
鮒ずしも乳酸発酵している食品なので、その発酵由来の複雑な風味ととても合うのだと思います。
ー同じ乳酸発酵している飲み物と、食べ物をペアリングしているんですね。味が濃いものと濃いものは喧嘩してしまいそうなイメージを持っていたのですが、上手に高めあっていて、いくらでも食べられそうです。
真野さん:日本酒は結構、癖のあるもの同士でペアリングすることが多いですね。人気のある組み合わせです。
ーおもしろい!
楽しい角打ちはこちらで。
真野さんの足元にあるのは青竹踏み!
ー「発酵室よはく」という店名は、どんな風に決めたんですか?
真野さん:お店のテーマがやっぱり「発酵」なので、何かしら発酵的な要素を入れたくて。それで「発酵室」っていう丁度良いカジュアルなワードが思い浮かびました。堅苦しくなく、皆が気軽に集える雰囲気が良いかなって。
あと今の時代って、油断していると日々余白が埋められていくような感覚があって。特に東京に住んでいた時は余白がないなあと思っていたんです。非合理的なものが排除されてしまうような。でも一見無駄に思えるものでも、実は何かしら、大事な事に繋がっていたりすると思うんです。全体の中で見たら必要はずのものが、ぱっと見無駄で非効率的に見えるからと言って、どんどん削られていっちゃうのが嫌だなと思っていて。
発酵食って究極のスローフードというか、スローフードだけど知恵が詰まっていて、ある意味合理的なんですよね。すごく手をかけているようで、実は結構時短に繋がる部分があったり。
塩麴とか、醤油麹とか玉ねぎ麴とか、 自分で作った発酵食や調味料って、時間をかけて作った発酵由来の味があるからこそ、いろんな調味料を入れなくても、簡単に味が決まって美味しくなるんです。
ーそうなんですか!作るのも活用するのも、知識が必要で大変なものだと想像してました。
真野さん:大変に思えるけど、実はそれさえやっちゃえばあとは楽!みたいなところがあったりします。混ぜて~寝かせて~、みたいな作業って、実はそれ自体がすごく楽しかったり、黙々と作業をしている間に、心に余白がうまれたりするんです。そういったよはくを大事にしていきたいなっていうのを込めて、店名を考えました。
ーぱっと見のコスパで判断せず、余白を見つめてみる。意外と意識しないと出来ないことですよね。コンセプトに合った素敵なお名前です。
そんなお話を聞いていたら、一つ一つのメニューが
より尊く感じられました。全部食べてみたい。
ー最後に、お店のPRをお願いします!
真野さん:そうですね、色んな目的で使って貰える店だと思います。基本は酒屋なので、お酒を買いに来て頂くのは勿論のこと、発酵食品も売ってますし。角打ちもできるので、ちょっと味見がてら飲んでみて貰って、気に入ったら買って頂くとかも。
お酒を買わなくても、普通に飲み屋使いして下さるお客さんもいます。角打ちスペースは狭めなので、お客さん同士で交流が生まれたりして、盛り上がってらっしゃることもあります。
ー社交場にもなっているんですね。楽しそうです。
真野さん:本当にもうふらっと、寄り道みたいな感じで来て下さい。
あと、ここで「季節の手仕事会」もやっています。冬は、キムチとか味噌を作ったり……春は何をやろうか考えているところです。そういったイベントも楽しいです。
手仕事会の情報は、下記のSNSをチェック!
お店情報
店名:発酵室よはく
所在地:〒606-8227 京都府京都市左京区田中里ノ前町56
営業時間:火・水・木・金・土
11時~20時 15時までは物販のみ、15時から角打ち開始!
※土曜日は11時から角打ち可能
定休日:日・月
🍃HP
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