2023.10.07
鴨川沿い、住宅街にて開かれる私塾|GACCOH・太田陽博さんインタビュー
日本有数の大学街、京都。
しかし、知は必ずしも市民に開かれていない。
市民との間の溝は、京都においても存在している。
学びは人生のある時期にのみ訪れ、
そして過ぎ去っていく。それでよいのだろうか。
市民の生活に根付いてこその学びではないのか。
大学街から少しだけ離れ、
住宅街で開かれてきたGACCOHは、
開設から十年経てなお私たちに問いかけている。
インタビュー、構成:堀内翔平
今回は、京都市左京区の出町柳近くで私塾・GACCOHを運営されている太田陽博さんをインタビューします!
太田さんがGACCOHを始めるまで
堀内:GACCOHを始めた経緯を教えてください。
太田:大学を普通やったら2004年に、卒業できるはずやったんですけど、キャンパスが遠すぎて行くのが億劫になって、課題もなかなか出せへんようになって。休学とかしてるうちに就職のタイミングも逃して、結局2006年に卒業したんです。
建築系の学科やったんで建設会社とか、建築家のアトリエの事務所に行くとかハウスメーカーに行くとかいろいろ選択肢はあったと思うんですけど、そういうのを逃した結果、大工になる道しかなかったんですよ。知り合いのおじさんが左官屋をやってて工務店を紹介してくれて、大工見習いとして働き始めました。でも1年ぐらいで辞めちゃって。
基本的に大工って修行中でも1年ぐらい経ったら自分の道具を揃えて仕事を覚えていくみたいで、「とりあえず車と道具一式全部買え」みたいな。それまでは、棟梁の車に乗っけてもらったり、道具も借りてたんですけど、もうそろそろ買えと。それがないと、仕事できないんで。
で、いま買うかもう辞めるか、どっちかにしろみたいな。おそらく大工としてやっていく決断をさせるために「買え」っていうのを大工の棟梁は言ったと思うんですけど、お金ないし、いきなり車買って、道具全部揃えたら100万超えるし……「じゃあ、辞めます」って言って辞めちゃったんですよ。それで建築系の仕事はストップして。
その後、ハローワークに行って紹介された五条の一般企業に就職して3年ぐらい働いてたんです。
ただ、建築とか何かを作るとかっていう仕事をストップさせて、特に興味のない企業で働いてたんで「なんかやりたいな」とは常々思ってて。
ちょうど3年ぐらいで仕事を辞めて引っ越そうかなと思ったタイミングで、不動産屋をやってる幼なじみが出町柳のこの物件を「住むか? リノベーションとか改装はもう自由にやってくれていいから」みたいな感じで紹介してくれたんです。
それで、借りて住み始めたのが2010年なんですけど。そこから自分で改装をしながらゆくゆくはスペースをやりたいなっていうので、徐々に始めたって感じなんですよね。
なんだかんだ1年ぐらい特に働きもせず貯金を食い潰しながら徐々に作っていったって感じですね。改装していきなり今みたいに講座をやったりとか絵画教室をやったっていうわけじゃなくて、最初はシェアハウスをやり始めたんです。
自分が住みつつ、1階はみんなが集まれるスペースで、上の階は人に貸してシェアハウス。で、そこに今の、哲学の講座をするやっぱり知りたいシリーズ(外部リンク:直近に開かれた「やっぱり知りたい!レヴィナス」)とかに繋がる人たち――芸術系に強い人とか、少し後に書店員やってる倉津拓也さんとかが入ってきてくれて。
シェアハウスを借りてくれた人が、いろんな人を紹介してくれたり、倉津さんやったら大量の本持ってきたりとか。そういう方が住むようになって、徐々に今に繋がる芽みたいなのができてきたのかなって。
シェアハウスから始まったGACCOH
堀内:なんでシェアハウスを始めようと思ったんですか。
太田:「お金を稼ぐ」っていうのの発想の中にそれぐらいしかなくて。とりあえず部屋貸したら数万でも入ってくるやんっていう。とりあえず2部屋は空いてたんで。
堀内:それはどういう形態でやってたんですか? 持ち主さんに言ってサブリース(又貸し)でやってたんですかね。
太田:幼なじみの不動産屋がこの物件の持ち主で、そいつ的には別に、勝手にどうぞって感じやったんで。家賃さえ払ってくれたら、その中で何してもいいと。
最初に始めたのはたぶん英会話教室とか、デザインの講座とか。そういうのから始めつつ、2013、4年ぐらいから、哲学の「やっぱり知りたいシリーズ」をやり始めて。最初はたしかアーレントの講座をやったと思います。アーレント研究者の百木漠さんっていう方がいらっしゃるんですけど、その方がその後も仲間の研究者を紹介してくださって。
堀内:ああ、百木さん。京都アカデメイア(外部リンク:HP)をやっていらっしゃる方ですよね。それ関連で研究者の繋がりがありそうですね。
太田:そうですね。そういう感じで徐々に繋がっていきましたね。
堀内:でもシェアハウスって、そもそも繋がりがある感じじゃないと結構難しいと思うんですけど、住人の募集は友だち関係とかだったんですか?
太田:いや、最初の最初は〝無〟でしたね。なにで募集したんかな、Twitterかな、ホームページかな。どっかに掲載してもらったっていう記憶もないんですけど、GACCOHのホームページにシェアハウスの項目を作って掲載したら、たまたま連絡して来た人がいろんな文化に明るい人で、意気投合してっていう感じです。
堀内:ホームページも当時からやってたんですね。じゃあ1階のスペースとか、英会話とかそのへんはシェアハウスと同じぐらいのタイミングだったんですかね。
太田:そうですね。でもまずは、シェアハウスやったと思うんですよね。僕は京都で生まれて京都に住んでますけど、この辺りに知り合いがいるとかいうわけでもなく、ゼロからシェアハウスをやったらたまたま人が来て、そこからっていう感じです。
太田さんによれば借りていた際の家賃は7万円程度だったが、2016年頃に購入。
空間的な工夫について
堀内:自分で直しながら借りるっていいですよね。
太田:そうですね。大工時代は短かったですけど、3軒ぐらいはゼロから家を建てる様子を見て、壁はったり、床はったり、いろいろ手伝ってたんで、この壁はどこまで剥がしていいとか、この柱はさわったらあかんとか構造的なことやったり、丸ノコとか、インパクトドライバーの使い方とか最低限のことは分かってたんで、そういうのが活きたっていうのはありますね。
堀内:この階段も面白いですよね。最初住み始めた1年のときに作っていったんですか?
太田:いや、これは元々ありました……。この家ってたぶん注文住宅で、ところどころデザインが凝らされてる部分があって。その1つがこの螺旋階段で。最初はこの階段も緑色やったんですよね。
1階ももともとふすまで区切られてて、奥が畳の部屋で手前が洋室やったんすよね。ふすまを取って1つの部屋にしました。
螺旋階段を2階から見た写真
1階(改装時)
堀内:1階の空間的な工夫を知りたいですね。
太田:コロナの前はこの机がなくて。以前の机はバラせて、椅子もスタッキングできたり、使わないときは全部片付けられるようにして、用途にあわせて組み替えられる空間を意識してました。
で、コロナになって「いや、もう人来ることないやろ」みたいなマインドになって。でっかい机を2つ作ろうと。その下に収納スペースも作れるし、そんな人来ないしそのほうが使い勝手いいかなと思って、そういう風にしたんですけど。コロナが終わって、今は「この机1個いらんな……」って気持ちになってます笑
だから常に机のサイズとか椅子のサイズは気にしてて。狭い分、できるだけスペースを有効活用できるような形式をずっと探ってますね。近いうちにこの机も一回バラして別の形に変えようと思ってます。あと、椅子に背もたれをつけたいなと思ってます。この椅子しんどいんで笑。
堀内:たしかにこの椅子、背もたれないなぁと思ってました。まあでも、その分広く取れるみたいなメリットもありますよね。
太田:そういう、機能性と快適さのバランスみたいなのはすっごい考えてます。もうミリ単位で。
1階(現在)
1階(配信時)
1階(机がなかった時期)
大学の機能を住宅街に埋め込む
堀内:GACCOHのコンセプトみたいなものはどうやって作っていったんですか。
太田:僕が大学で建築を学んでたときって「分散させる」みたいなのがすごい流行ってたんですよ。
たとえば「大学の機能を町に分散させる」とか、大きな商業スペースがあったとすると、その機能を町に点在させるとか。
そういう考え方をどこか引きずってて、大学の1つの研究室を人が生活しているまちの中に置いてみるとどうやろみたいな、そういう感覚はここを始めるときにあったと思います。
堀内:2000年代初頭って、時代的には地方分権とかそういう文脈でNPOとかがもてはやされていた時期なのかなっていう印象ありますね。
太田:あと京都の土地柄、「うなぎの寝床」とかって言われるじゃないですか。ここもそうですけど、間口が狭くて奥に長いみたいなちっちゃい空間ですよね。そんな京都で何ができるかみたいな課題があって、よく出る案としては、大きいものの機能を分散させてそこに埋め込む、そういうのがすっごい流行ってたと思います。
堀内:なるほど、建築的にはそういう考え方になるんですね。
太田:そういうのの延長でやり始めたし、今もそういうとこはあるとは思うんです。大学も大学だけでは完結しないし。それを町とか住宅とか、大学の外とどう関係させるかみたいなのは大事やと思うんですよ。
その1つが「やっぱり知りたいシリーズ」みたいな、専門で研究してる人にウチに来てもらって、市民に向けて話してもらうのを大学の中でやるんじゃなくて人が生活してるところでやることによって、いい感じになるんじゃないかって。特にどこの大学に頼まれたわけではないですけど勝手にやってます笑。
堀内:そういうのって、朝日カルチャーセンター(外部リンク:HP)とかのイメージがありますけども。
太田:住宅街とか人の生活と近いところでやるのがいいなと思ってて。繁華街のビルとかでやると、仕事帰りとかには行きやすいかもしれないですけど、いろんな人の生活とか日常との接点は減るかなと思って。「住み開き」って言葉もありましたよね。自分が住んでる家でやるっていう。ああいう文脈でもあったのかなと思います。
堀内:あー。アサダワタルさんが『住み開き』って本(外部リンク:Amazon)を出したのも2010年代前半ですよね。
このへんって特に、大学街でもありつつ住宅街だし、学問とかに明るい人もけっこう住んでますよねたぶん。
太田:「住み開き」っていう言葉は当時知らなかったんで、意識はしてなかったですけど、人の生活と大学とかそういう専門的なものを、いかにミックスさせるかを考えていたとは思いますね。
哲学講座と絵画教室
堀内:GACCOHって僕の中では哲学の講座とかを開いているイメージが強いんですが、ああいうのってどうやってできていったんですか。
太田:倉津さんが住むようになって最初は人文系の読書会とかをやってたのかな。あと、ゲンロンカフェ(外部リンク:HP)のサテライト配信みたいな企画があって。ゲンロンカフェでやってるイベントを全国各地いくつかのスペースで配信して、地方の人たちは特定の場所に行けばゲンロンカフェのイベントがリアルタイムで見れますという。それの関西スポットがうちやったんです。
堀内:倉津さんってそういうのを関西でやる人でしたもんね。
太田:そのゲンロンカフェのサテライト企画に百木さんも来てたんじゃないか思うんですよね。それで「アーレントの講座ちょっとやってくださいよ」みたいな感じで講座は始まったと思います。
あと、ここはレンタルもしてたんですよね。学術系のミニ研究会とか学外ゼミをここでやるとか。
哲学系のイメージが強いかもしれないですけど、絵画教室とか水墨画ワークショップとかも定期的にやってて。またそれは全然違う層の人が来てくださってます。
哲学系だけやったら来る人の層っていうのは……20代~50代、男性多めみたいなところがあるんですけど。絵画教室は近所の小学生がメインで来てくれてますし、水墨画は年配の方や海外の方も来てくれたり、結構いろんな方が訪れる場所になってて、やってくれている杉本先生、麻水先生には感謝してます。
堀内:広報とかはどうやってるんですか? 哲学系のはTwitterのイメージですけど。
太田:絵画教室は親御さんが別の子たちを連れてきてくれたりとか口コミがメインですね。水墨画は、「水墨画 京都」みたいなので検索して来てくれる人が多いです。
哲学系のやつはもうTwitterオンリーですね。それがホンマに困ってます。Twitterもいろいろあるしそればっかりに頼っててもというところはあります。
堀内:Twitterやってるのも多くは院生の人とか、一部ですもんね。そうじゃない人たちに届きにくいですよね。
講座の様子
水墨画ワークショップの様子
絵画教室(Instagramより)
ガッコー文庫に借りに来る子どもたち
太田:そういうのもあって、玄関のところにガッコー文庫っていう図書ボックスをコロナを機に設置したんです。
コロナの時期に人が誰も来なくなって、イベントはオンラインである程度できたとしても、ここに来る人がいなくなって忘れ去られると思ったんで。誰でも借りていい本棚を玄関前の軒下に設置したら、定期的に人が来てくれるようになって。それで本を借りて「こういう場所あるんや」みたいなのを知る。これまで来てた人じゃない人がたぶん借りてくれてるみたいです。
通りすがる人が「なんやろ」みたいな感じで目に留まって足止めて、そこで本借りていって、また返しに来てくれたりします。
これまでとは違う形でウチを使ってくれる人が出てきて、それが楽しくて最近は本棚を頑張ってますね。
堀内:そういや熊野寮も同じようなことやってて、熊野寮の玄関に本棚置いてますね。
太田:知ってます知ってます。牛乳入れる冷蔵庫みたいなやつに本入れてますよね。前を通った時にどんな本が入ってるんかなって見てます。
うちは漫画をめちゃめちゃ入れてて。そしたら、なんかもう子どもがわんさか来るみたいな。最近は漫画目当ての子供の常連さんが何組もあらわれてます。
堀内:たしかに漫画入れるって珍しいですよね。なんかパクられそうですけど。
太田:全然、漫画の方が返ってきますね。けっこういい感じの人文書とかを入れたりすると人文書って読むの時間かかるし、積ん読とかになるからなのか返ってきてない本も多いですよ。漫画の方がめちゃめちゃ回転します。
絵画教室で子ども来てくれてますけど、それ以外でもこういう場所があるっていうのを子どもたちに知ってもらえてよかったなって。
声をかけなくてもいい、開かれた場所
太田:スペースって特にちっちゃかったりすると、なかなか入りにくかったりとか、コミュニティが強くなったりとかって傾向があると思うんですけど、できるだけ〝コミュニティ化しないように〟心がけてるというか、そうありたいなと思ってて。
なんとなく来れてサッと帰れるとか、ジメジメした人間付き合いが必要ないみたいな。
堀内:哲学の院生とか「ムラ」になりやすい人たちの筆頭みたいなとこありますからね笑
太田:イベントの時もできるだけ話しかけない……じゃないですけど、そういうのは意識してます。
ガッコー文庫も外にあるので、別に中に入ってこなくても、夜でも勝手に借りることができます。僕がコミュニケーションを取る必要もないですし。勝手にできるみたいなのを大事にしてます。
本来はこの一階の部屋もピロティみたいにしてトンネル状態で開け放ってるのが一番いいなと思いますけど。一応家なんで。
堀内:コミュニティ作りたい人がこういう場をやってること多いんで、ふつう「どうやって声かけようかな」になると思うんですけど、「どうやって声をかけなくて済むか」ってのは面白いですね。
太田:チェーン店のコーヒーショップみたいなのが理想です。小さいカフェとかだと、「店主と仲良くならなアカンのちゃうか」みたいな圧力があったりするじゃないですか。
でもドトールとかやったら、そういうのを気にせず勝手に行って帰ってこれるし。ここは小さいスペースですけどそういう感じを目指したいなと。
堀内:思えば、僕もGACCOHさんとそういう関わり方をしてたんだなあと気づきました。
太田:そう思います。まあ、良い面もあれば、あんまり広がっていかないみたいな悪い面もありますけど……。
住宅街に位置しているGACCOH
場所が継続できる理由——公私のグラデーション
堀内:そこで僕から見てすごいなって思うのは、続けるってことが結構難しいと思うんですよね。こういうスペースってやっぱどうしても、まず〝3年〟ぐらいが1つの壁だと思うんですよ。
で、〝10年〟ぐらいやると、それ以上続けるのが大変みたいなのがありそうな気がするんですけど……もう10年以上続けてらっしゃいますよね。
本人に聞くのもおかしいですけど、継続できるのはなんでなんでしょうね。
太田:自分も住みながらこういう活動をする時に、この3階建ての建物の構造が結果的に良くて。ここって細長い空間が縦に3階積まれていて、1階は半公共的な、みんなが来れるようなスペースで、2階がその中間ぐらい。僕の仕事部屋でもあり、キッチンや食卓もあって、あと本棚もあって、来たいって人がいたら別に来てもいいよぐらいの感じで。3階が僕ら家族の寝る部屋だったり完全プライベートスペースです。
縦に公的スペースと私的スペースみたいなのがグラデーションになっている。建物の構造がたまたまそういう感じやって、自分のプライベートも守りつつ、こういう活動もできるっていうので。
堀内:へぇー。たまたまとは思えないすごいコンセプチュアルな……
太田:平屋やったり二階建てやったらけっこう難しいかなって思うんですよね。僕は、イラストを描いたり、デザインの仕事してて、2階でパソコンに向かってるときに1階で絵画教室やっててもそんな気にならないというか、階を隔ててるのでいい感じに人の気配を感じながら2階で仕事ができてます。
無理なくできる環境っていうのが、けっこう建物的な特徴から実現できてて、ラッキーやったなって。
堀内:『住み開き』のアサダワタルさんも「ちょっとだけ開く」っていうのが大事なんだって言ってましたね。開きすぎると大変というか、疲れるだろうなと。
太田:その調節が2階建てじゃなくて3階建てだとうまくいくのかなって思います。
GACCOHの2階部分
太田さんにとってGACCOHとは
堀内:GACCOHって名前はどうやって決めたんですか?
太田:学校、スクールって意味ですけど、僕が勉強したかったってことですよね。公共的に学ぶスペースを作りたいっていうのももちろんありますけど、僕が建築を途中で断念してたみたいなのもあるし、そういう意味では、自分が再び学ぶための学校をやりたいと思ってGACCOHっていう名前をつけて。
堀内:やっぱりそういう、自分が学べるっていうことも続いている理由の1つでもあったりするんですかね。
太田:そうですね。たぶん勉強効率的には自分が主催者にならずにどっかに行ってやった方がいいと思うんですけど。僕あんまり外に行くっていうことがないんで。自分の生活の中に学ぶ時間をどうやったら組み込めるかってなったときに主催するっていうのは、1つの方法やと思うんです。
堀内:僕も読書会を開いたりすることあるんですけど、やっぱり自分が開くとさすがに読まざるを得ないですね。イベントでも自分がコーディネートした以上はやっぱり参加者として楽しもうってなりますよね。
太田:なにかがっつり目的があるみたいな人にはあんまり向かないかもしれないですけど、自分の住んでるところでぼんやりいろいろやるっていう意味では主催者になりつつ自分も学ぶっていうのはいいんじゃないかなっていう気はしますね。
そういうのが自分の性格に合ってたんやと思います。なんとなくやる中でなにかいろんなことが身についたりとか、興味が広がっていったりとかっていう感じなんで。
堀内:実際、太田さんの中ではどういう学びがあったんですか?
太田:それこそガッコー文庫の本棚を作るときに……アーレントってレイバー/ワーク/アクションみたいな三区分あるじゃないですか。
ふつうアーレント的にはアクション、公的な〝活動〟がすごい大事なわけですけど、よくよく読んでみるとワーク、〝仕事〟の部分がアクションを下支えしてたりするっていう話があって。
その〝仕事〟っていうのは文章を書いたり、椅子とか机とか場自体を作ったりとかっていう、なにか人の有限性を超えて残る耐久的なものを作る営みなわけですけど、そういう〝仕事〟も重要だよねみたいな話があって。そういうのを聞いてる中で、アーレントの〝仕事〟的な活動を取り入れたいなとか。
それで、玄関の軒下っていう道路と家の間の完全には公的でも私的でもない場所に本棚を作る。そうしたら面白いことが起きるんじゃないか。そんな感じで学んだことを自分なりに咀嚼して、次作るものに生かしてみたりしてます。
「やっぱり知りたい!ハンナ・アーレント」告知画像
あと、絵画教室も。僕、一応イラストレーターとして仕事してますけど、美術大学に通ったこともないし、デッサンの素養とかもないんですけど、たまにレッスンに参加して先生にアドバイスもらったり、すごいためになってます。
堀内:絵画とか「機会があったらやってみたい」ってなりがちなやつというか、いわゆるカルチャーセンター的なものって、仕事を引退した人とかが行くみたいなイメージもあると思うんですけど、ライフスタイルとしてちょっと時間ができたときにやってみたかったことをやるのにたぶんフィットしてるんでしょうね。
最後にPRをよろしくお願いします。
太田:絵画教室は子どもが多いんですけど、大人の部が火曜日の夜にあって、まだ空きがあるので、大人の方来てください。見学も大歓迎です。一緒に絵を描きましょう。
あと、哲学系のイベントは現地参加だけでなくオンライン配信もやってるので、全国の方々にどんどんオンラインで買って参加してほしいなって。
うちみたいなスペースがあることで、このへんに住んでる人だけじゃなくて、文化全般にいい効果があると思ってやってます。ネットでイベントのチケット買うとかで応援してもらえたら嬉しいです。
堀内:太田さん、ありがとうございました。
スペース情報
スペース名:GACCOH
所在地:京都市左京区吉田泉殿町63-17
🎓HP
お問合せはShuJu不動産まで。
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