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2023.09.24

1701年創業の伝統を受け継ぐ『相談型薬局』|平井常榮堂薬局さんインタビュー

HOSOYAN

遡ること、322年。

時は元禄、江戸幕府の誕生より百年が経ち、

衣食住の多様化や劇場・出版等の上方文化が栄え始めたころ、京都の川端二条で一つの薬屋は産声をあげた。

西洋医学が主流になる前、人々の手にする薬は漢方であった。

舟形の溝を彫った石臼の薬研(やげん)に生薬を入れ、

軸の付いた車輪状のひき具である薬研車で粉末状し、

その粉末化した生薬を混ぜ合わせることで、ようやっと薬は完成する。

現在も自動ドアが開けば、その薬研と薬研車はお出迎えをしてくれる。

私たちの暮らす京都では、そこかしこに伝統を目にすることができる。

ただ、それは骨董品のように、ただ眺めるものでなく、

私たちの生活に根付くものであってほしい。

インタビュー、構成:HOSOYAN

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今回は、京都市左京区の高野で漢方を専門に販売される平井常榮堂薬局さんの古川さんをインタビューします!


お店の歴史について


ー漢方が専門の薬局なんですか?

 

古川:そういうわけでないんですけど、漢方が多いってだけです(笑)

 

ーお店って、元々は川端二条にあったんですか?

 

古川:そうそう、川端二条の少し下がったところで、320年、薬屋だったようです。創業は1701年で、赤穂浪士の討ち入りとかがが近いですかね。

 

ー薬店(やくてん)って?

 

古川:今の薬局と薬店の違いは薬剤師がいるかいないか、なのですけど、江戸時代は薬剤師免許とか無いので名乗ったら誰でも薬屋になれたようです。

 

ー江戸時代・・・。インタビューする前に、コウノトリの作者が書いている「竜馬がゆく」を読んでいたら、少年が薬屋を名乗っていましたね。

 

古川:そうそう。平井常榮堂の話に戻ると、明治に西洋医学が入ってきて、「日本の医療の基本は西洋医学ですよ」という制度ができました。そういった漢方の危機が訪れる中、平井常榮堂も化学的な薬も売っていた時代もあったようです。その後、自然とまた漢方、薬草中心のお店になりました。

 

ー漢方も無くなる可能性があったんですね。ちなみに薬草というのは?

 

古川:健康を保つためにお茶として飲まれていたドグダミやびわの葉とか。昭和の時代に何度か薬草ブームがあったようです。

 

ー薬草ブーム・・・

 

古川:時々、あるんです。ドクダミ茶やあまちゃづる茶がわぁーって売れたり。

 

ー空前の薬草ブームですね(笑)

 

ヒアリング重視の薬局


ー古川さんは薬剤師の免許をお持ちですよね。

 

古川:私は徳島の薬学部を卒業し、薬剤師の免許を取得しています。一応、国際中医師という資格も持っています(笑)

 

 

ー噂で聞いたのですが、ヒアリングをしてくれるのは本当ですか?

 

古川:本当ですよ。

 

ーそれは嬉しいですね。僕は自律神経が完全に失調しているのですが、漢方を検索しても多すぎてわからなかったです。

 

古川:そうですよね。基本的に私一人でお店を回しているので、予約制になっています。

 

ー症状を聞いていく形ですか?

 

古川:はい。一応、問診票があるので、書いていただいて、それから話を聞いていくという形です。これも、お医者さんの診断というものではなく、あくまで相談なので、お客様と、こうこうこうだから、こういう漢方にしましょうかって話し合っていきます。

 

ーそうなんですね。信頼できます。

 

ーどういったお客様が来られるんですか?

 

古川:女性の方が多いですね。時々、男性もお越しになられますよ。

 

ー年代とかって教えてもらえますか?

 

古川:いろいろですね。女性の方だと、更年期の症状で悩まれている方が多いです。40代から50代の方かな。やっぱり、更年期の時期は体調が変わりやすいので。症状は人によって様々で、西洋のお薬だけでは難しいことも多くて、漢方との相性がいいみたいで、通ってくださる方が多めです。

 

ーお値段っていくらくらいなんですか?

 

古川:お出しする漢方によりますよね。続けたいけど予算が、、って仰られる学生さんなどには、例えば予算が2000円とかだったら、その予算におさまるように、「これは1/2入れて、1/3入れて」という風な工夫をしたりしています。

 

ーそれ凄いですね。僕は学生時代、本当に困窮していたので助かります。

 

古川:でもお薬の量が少ないと効き目が弱くなるので、なるべく予算の余裕があると嬉しいです(笑)

 

ー漢方は始めるとしたら、どれくらいの期間を考えたらよろしいのでしょうか?

 

古川:風邪とか短期の症状は短期間で良くなりますが、長く困っている症状は何ヶ月もかかることがあります。私の場合、最初は一週間分お薬をお出しして、お薬がその方に合っているか確認して、また次を考えます。

 

ー驚いたんですけど、電子決済可能なんですね。

 

古川:そうです。電子決済大丈夫ですよ!

 

お店選び


古川:はい。1月くらいから不動産屋さんをあちこち回ったり、ネットで調べて、5月くらいに決めました。

 

ー4か月ぐらい探していたんですね。

 

古川:ネットで見て、よさげだったら不動産屋さんと内見してって感じです。

 

ーこの物件の決め手は?

 

古川:最初はピンと来なかったので、スルーしたんです。ほかの不動産屋さんのところに行った際、またおススメされて、その不動産屋さんはいろんな角度から写真を見せてくれたんです。それでいいなと思いました。

 

 

ー具体的にどの点が良かったですか?

 

古川:外の並木がいいなと思ったんです。私のいる場所から、緑が見えるって想像できたんで。あと、左京図書館が近いというのもポイントでした。

 

ー図書館ですか?

 

古川:図書館行く人は、薬草が好きっていう私個人の考えがあって(笑)

 

ーなんとなく、わかりますよ(笑)。それに少し失礼かもしれませんが、漢方を買いに行くなら、ついでに何かしたいと考えますよね。

 

古川:図書館と同じように、気軽に入れる薬局だといいなあって。

 

ー確かにそうですよね。病院とセットだと思い込んで、薬局はどこかハードルの高い物だと感じてしまいます。

 

素敵な内装について


ー結構、内装しっかりされてますよね。内装はどうされたんですか?

 

古川:世界文庫アカデミーってご存じですか?

 

ー京都で行われている大人向けのカルチャースクールですよね。

 

古川:継ぐ前の話で、いつか自分のお店をやりたいという気持ちが高まっていました。その時に通ってみたんです。

 

ー努力家ですね

 

古川:本当は大好きな『ミナ ペルホネン』の皆川さんがいたから、「わあ、行こう!」と思った(笑)

 

ー実際、どうでした?

 

古川:編集者の方やカフェの店長さん、それこそ不動産屋さんがいて、勉強になりました。その学校の同級生がカフェをオープンする際、手伝いに行ったんです。そこで、ここの内装を行ってくれた設計士さんと出会いました。

 

ー学校、友人、と様々な形で繋がっていきますね(笑)

 

古川:本当、偶然だらけ。その設計士さんに、ここの物件を契約しようか考えていた時で、またも偶然持っていた見取り図面を見せてみたんです。

 

ー設計士さんはどうしたんですか?

 

古川:軽く図面を書いてくれて、その人が紹介で施工の会社さんを紹介してくださいました。

 

歴史を感じさせる薬棚

ーこの棚は、川端二条のお店から運んで来たんですか?

 

古川:そうですよ。この棚を置くために、寸法とかも揃えて、設計してもらいました。

 

 

ーもしかして、この篩(ふるい)もですか?

 

古川:そうそう、この篩を掛けるために梁を作りました(笑)

 

ーここは元々どんなお店だったんですか?

 

古川:元たこ焼き屋さんで、更新ごとにお店が代わる難しい物件だったんです。周りからも「止めた方がいいんじゃない?」と言われたりしたんですけど、「薬局なら、きっと大丈夫だろう」と思いました。

 

ーたしかに、飲食店としては回転率考えたら厳しいけど、薬局ならフィットしそうですもんね。

 

ー施工の期間ってどれくらい掛かりましたか?

 

古川:一か月半くらいかな。

 

ー下世話な話なんですけど、どれくらいの費用でした?

 

古川:〇×万円ですね。

 

ーこれだけ、素敵なお店ですもんね。

 

古川:設計費も、この棚の引っ越し代も入ってるから、そうですよね。

 

ーそれ込みなら、安いですね!

 

最後に、平井常榮堂薬局さんはとても親切な薬局です。話しやすく、ざっくばらんに相談できます。老若男女問わず、通ってみることをお勧めします!

 

会社情報


会社名:平井常榮堂薬局

所在地:京都府京都市左京区高野西開町21−5

営業時間:月・火・水・土・日 10時~18時

定休日:木・金・祝日

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HOSOYAN

ShuJu不動産のディレクター。この世に生を受けてから、集団生活の中で育った逆箱入り息子。学生寮とシェアハウスを交互に繰り返した結果、未だに一人暮らしを経験したことがない既婚者。『一人暮らしは未経験だけれど、職人としてリフォームした経験があるので大丈夫!』と本人は意気込んでいた。

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