2024.09.14
ホントのインド料理を左京区に届ける|「SANGO」サンちゃん・リオさんインタビュー
巷で話題の「インネパ料理」を知っているだろうか。
もしあなたがこの名前を知らずとも、どこかで食べたことがあるはずだ。
というのも、街中のインド料理屋のほとんどが、実はインネパ料理なのである。
インネパ料理とは一般的に、ネパール人が提供するインド料理を指す。特徴として、ナンとカレーがメニューの中心であり、インドっぽいダンサブルなBGMが流れている。そして、よく店内を見渡すと、ネパールの国旗が掲げられている。
リーズナブルで、提供時間が早く、どこで食べても味がだいたい同じという安心感から、インネパ料理は幅広い層に人気がある。
指摘したいのは、皆が思い浮かべるインドカレーはインド料理全体のほんの一部に過ぎないということだ。
日本の約8.7倍の国土を持つインドである。
バターチキンカレーの味ひとつとって、あんなに均一なワケがないのだ。
―――
学生街にはインネパ料理が付きものである。京都大学周辺もその例に漏れない。
そんな中、とあるインド料理屋がカレー好きの間で話題になっている。連日たくさんのお客で賑わい、このお店のために遠方から訪れる人さえいる。
人気の秘密はなんだろうか。ファンの1人であるスタッフが取材した。
インタビュー、構成:今井壮太
今回は、京大北部キャンパスの近くで東インドの家庭料理を提供している「SANGO」のオーナー夫婦、サンちゃん(男性)とリオさん(女性)にインタビューします!
お店について
ーまず、お店のコンセプトを教えてください!
サン:無添加スパイスを使った、東インドの家庭料理です。私はホントのインド料理を食べたいから料理をします。そして、食べた人は喜んでくれます。みんなハッピーです。
リオ:彼は東インド出身なんですけど、和食が口に合わなくて、日本人向けのインド料理も苦手なんです。それで、地元の味を再現したくてお店を始めました。
ーたしかに、SANGOとインネパでは、スパイスの香りもカレーの味も、ぜんぜん違います。
サン:前に京大カレー部が勉強に来たね。マトンビンダル―のレシピを教えた。
ーやっぱり交流があるんですね。イマイの周りのカレー好き達もSANGOには一目置いています。人気の理由はなんでしょうか?
リオ:スパイスにこだわってます。全てインドから、オーガニックなものを直接送ってもらっているんです。
サン:家の近くの農家からね。お金はかかるけど、美味しくて安全!
ー素材は大事ですね。
リオ:あと、メニューのベースは、旦那の母のレシピです。正真正銘、東インドの家庭料理を作ってきたお母様から教わりました。それを日本の食材でも美味しくなるように工夫して、盛り付けや組み合わせを考えて、それをスタッフに伝授しています。
サン:インドの食材も使いたいけれど、ビリヤニ1つ5000円になっちゃう(笑)
ー超高級ビリヤニ、いつか食べてみたいです(笑)。味はもちろん、料理の見た目が上品で可愛いこともSANGOの魅力ですよね。内装も他店とは違います。
イマイの同朋が修行中の「無の会」のチラシ。SANGOで甘酒を販売中です。
リオ:私たちは独自で開業したので、他のインド料理屋さんのように型通りにやる必要がありません。料理もサービスも、みんなで考えながら常に改善して提供しています。
ー個人経営の魅力ですね。フランチャイズ店やチェーン店だと、マニュアルさえ守ればOKという思考になって、本当にこのお店が良くなるためには何が足りないか考える人が少ないです。
サン:あと、東インドの料理だしてる店は日本に全然ありません。
ー東インドの料理にはどんな特徴があるんですか?
サン:お魚をたくさん使う。あと、スパイスの中でもマスタードが大事。最近マスタードを変えて、もっと美味しくなった!
ー具材に魚類を使うカレーって、インネパだと基本的にシーフードカレー1種類ですよね。他にあったとしても、ランチセットでは選べないことが多い。このお店にはチンチラ・タイ・ブリなど、珍しいものがたくさんあって、味を想像するだけで楽しいです。
インドの珍スイーツもあります
ーどんなお客さんがいらっしゃっていますか?
サン:京大生が60%、あとは先生とネイバーフッド(近所の方々)。
リオ:インド人とネパール人もけっこう来るんです。
ーへえ!
サン:彼らだけで満席になったこともあるよ。ホントの味だから!
ナンとカレーのセットもあります
開業までの道のり
リオ:ここで営業する前は、下鴨神社の近くで営業していました。価格帯を上げて、もうちょっとリッチな路線だったんです。
ー移転の理由はなんでしょうか?
サン:コロナです。人が全然こなかった。すぐにお店を閉めて、友人の紹介で和食料理店で働きました。
ー和食料理店!
リオ:私は子育てで忙しかったので、仕事は旦那に任せていました。
ー大変な時期でしたね。
サン:でも、修行したからSANGOにはお酒のアテがあるよ。
ー酒飲みをよく分かっているラインナップです。
サン:あと、料理のうまいシェフに出会った。今は一緒に働いています。
シェフ(アブドゥルさん)
ー七転び八起きですね。つらかったことはありませんか?
サン:ない!本気でやれば、必ず良いことが起きます。最近は仕込みが大変だけど、がんばったら、みんな美味しいもの食べて、楽しい会話になる。だから仕込みも楽しい!
リオ:お互いにコツコツと努力をすることが好きですが、楽しいことも大好きなんです。だから、2人で一緒に頑張れば、いつも笑顔でいられます。
イマイの注文でちょうどカレーが売り切れました
BALIHAR VILLAGEとは?
リオ:私はヒップホップ系のダンサーとして活動していました。アメリカでオーディションを受ける前に体幹を鍛えたくて、インドへヨガ修行に行ったんです。そしたら旦那に出逢いました。
ハタヨガ(呼吸を大切にするヨガ)をするリオさん
サン:私はツアーガイドでした。あとはソーシャルワーカーとか、デザイナーとか。ぜんぶ自分で始めました!
ーどうして会社に所属しなかったんですか。
サン:自分でスタートする方が楽しいし、勉強になる。SANGOも同じ。今まで、会社で働いたのは和食料理店だけ(笑)。リオさんと仲良くなって、結婚して、日本に来たんです。
ー国際結婚ですね。親御さんの反応はいかがでしたか。
リオ:「あんたインドに嫁いくんか!?」てビックリしてたけど、彼を見たらすぐに安心してくれました。
サン:親同士も仲良くしています。子供3人はまだインドに行ってませんが、いつか、家族みんなインドで暮らします。
ーえ!そうなんですか。
サン:地元でやりたいことがあります。
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ーBALIHAR VILLAGEですね。SANGOを訪れたことのある方は店内のチラシを読んでいるかと思いますが、どんな場所か教えてください。
サン:オーファン(孤児)やホームレスが不安なく生きて、勉強できるようにサポートする村です。今はまだありませんが、私の地元で作っています。たくさんの人が応援してくれて、完成がみえてきました。
リオ:エコビレッジと呼ばれるものに近いのですが、特に教育と社会福祉を重視しています。また、学校やお家だけでなく、旅行者向けの宿泊施設も用意して、エコツーリズムで得た収益を運営費に充てます。
村づくりの光景
ーこの活動をするきっかけはありますか?
サン:恩返しがしたい、それだけ。
リオ:彼は裕福な家庭の出身ではないのですが、周りの人の支援のおかげで勉強に励むことができて、4か国語を習得して、いろいろな仕事を経験してきました。
ー4か国語!スゴイ。
サン:今のインドは、みんな生まれた環境で人生が決まっちゃう。僕はラッキーでした。だから、同じチャンスを地元のみんなに与えたい。
BALIHAR VILLAGEの未来予想図
HPはこちら(ドネーションもお願いします!)
これから
サン:5年以内にBALIHAR VILLAGEができる。そしたら家族で引っ越す!
ーSANGOはどうなるんですか?
2人:もちろん続けます!
ーよかった!
リオ:毎日たくさんのお客様がいらっしゃって、私たちの好きな味を喜んでもらえているということが嬉しいです。引っ越したらお店には立てなくなるけれど、料理とサービスの質をしっかりと守って、焦らずにお店を増やしていきたいです。VILLAGEの資金源にもできたらいいなと考えています。
ーSANGOのようなお店が増えたら、インネパばかりのインド料理界に良い変化が起きると思います。
サン:僕たちが頑張ったら、他のインド料理屋も頑張る。どっちも美味しくなって、ハッピーです!
ー僕もハッピーです!引き続き頑張ってください!
お店情報
店名:SANGO
住所:〒606-8267 京都府京都市左京区北白川西町82−3 光楽堂ビル B1
営業時間:Lunch 11時-15時, Dinner 17時-23時
不定休
お問合せはShuJu不動産まで。
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